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「良かったね。黒澤くん」 無邪気にはしゃぐ様子にケーイチもほっこりしたのか、優しいトーンで有紀に話しかけた。 「あざーす!てかセンパイ俺のこと有紀でいいよ!あ、いいですよ!いや~、今日ガッコ来てて良かった~!フレンドキャンプとか訳わかんないイベントだと思ってたけど、リクと同じグループなら最高じゃん」 ペラペラと饒舌に喋りながら、猫のようにすり寄ってくる有紀の頭を無意識に撫でていた。それに気持ちよさそうに目を細める。 脱色したであろう髪は、軋むことなくサラサラだ。 あの頃と見た目はだいぶ変わっているが、渥と違って有紀は昔と変わらず人懐っこく甘えたな様子に俺は安堵していた。 「てかさ、リク!渥にはもう会った?」 「うん、もう会ったよ。同じクラスだったし」 「は!?マジ!?いっつも渥ばっかズリー!しかも俺にはリクのことなんにも言ってなかったし、サイアク」 有紀が頬を膨らませてぷりぷり怒っている。 その姿につい笑みが零れた。 「ズリーって…仕方ないだろ?俺と渥は同学年で有紀は一個下なんだから」 「うー…それが嫌なんだってば!ちょっと生まれるのが遅かっただけで学年も離れるし教室も離れるし…渥ばっかズリーよ」 しょんぼりしている有紀が、なんだか可愛くて元気出せよと肩を叩く。それをチラリと見て有紀はパッと表情を明るくした。 「あ、でも!今はまたこうしてリクに会えたしグループ一緒だし幸せだよね」 「立ち直り早いな、お前は」 立ち直りの早さは昔から変わらないようだ。 「あ、佳威だ。終わったのかな?」 横でケーイチがそう言うので、ケーイチの向いている方向を見ると少し離れた場所から佳威がこちらに歩いてきているのが見えた。 表情を見る限り、あまり機嫌が良さそうには見えない。 しかも心なしか早足でこちらに向かって来ている気がする。 「だから顔怖いって」 ケーイチが苦笑気味に呟くので、俺も頷いた。 眉間にめっちゃ皺寄ってるぞ。 佳威は長い足をフルに生かしてズカズカと歩いてくると、未だ俺に引っ付いたままだった有紀をべりっと勢いよく引き離した。 「あーーーー!!なにすんの!佳威クン」 それに有紀が意を唱えるが、佳威は気にした様子もなくフンと鼻を鳴らす。 「こんな大勢いるとこでベタベタすんな」 「それ、佳威が言える台詞?」 即座にケーイチが真顔で突っ込むと、若干言葉に詰まった佳威は分かりやすくケーイチから目を逸らした。 俺との間に立ちはだかる佳威と、その横で忌々しそうな顔で佳威を睨んでいる有紀に目をやって、俺はふと首を傾げる。 「そういえば、二人は知り合いなのか?」 佳威クンと呼ぶあたり、結構仲が良さそうな気もするが…俺には二人の接点が思い付かない。 「あー…こいつはあれだ。桐根学園で一緒だったんだよ」 「桐根学園…?……ん?…ってことは有紀お前まさか」 「俺?もちろんαだよー」 マジで言ってんの!!? 「お前ら兄弟揃ってα!?なんだ、それ!信じらんねえ…」 羨ましいにも程がある。

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