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08
渥と有紀の両親はどちらもαだったので、確かにαが産まれる確率は高い。
だからといって確実にαが産まれるとは限らないはずだ。
それなのに二人産んだうち二人ともαだなんて…凄まじい遺伝子とでも言うべきか。
「ねー、すごいよねー」
すごいよねー、って…
もはや他人事である。
「でも桐根で一緒だったからって学年違うのにどこに接点があるんだ?」
話が逸れてしまったので最初の話に戻すと、今度は有紀が話の続きを喋り出した。
「部活が一緒だったんだよー!ねー、佳威クン」
「佳威、部活なんてしてたのか!?」
部活をしているイメージが湧かない。
「そんな驚くことか?桐根ではサッカーやってたんだよ。そしたらこいつが入部してきて、このテンションで話し掛けてくるから仕方なく相手してやってた」
「だってさー、渥と同じくらい格好いい人初めて見たから、興味湧いちゃって!」
「それ、褒めてんのか?」
「褒めてるに決まってんじゃーん」
有紀がケラケラと笑う。
どうも言葉に重みがない。
でも確かに系統は全然違うが渥も佳威も飛び抜けて男前だ。美形って多分こういう奴らのことを言うんだろうな。
でもそう言う有紀も俺からしたら同レベルだと思うが、また話が逸れそうなので心の中で留めておいた。
「まあ、そんな感じだ。こいつとは」
佳威が面倒臭そうに話をまとめて、有紀の背中を軽く叩いた。
「ちなみに俺とリクは幼馴染だよー!超仲良かったもんね!チューした仲だもんね!」
「ゆ、有紀…!」
「は?」
「え?」
佳威の隙をついて、またもや有紀が俺の腕を引いてガシッと腕を組んだ。
「どういうこと?」
ケーイチが不思議そうな顔でこちらを見る。佳威は佳威で眉間に皺を刻んでるし、お願いだから誤解しないで頂きたい。
あまり明確には覚えてないが、なんかのノリでチューされた記憶はあった。それも多分深い意味は無かったと思う。
「変な意味じゃないよ!?ほら、子供の頃って、特に何も考えずにチューとかしちゃうじゃん?そういうのだよ、な!有紀」
「え?俺はリクのこと好きだからチューしたよ?」
何言ってんの?みたいな顔で見られる。なんで俺が変なこと言ってるみたいになってるんだ。
「とにかく!子供の頃のは時効です、時効!有紀もそんな昔のこと言うの無し!」
「えー」
有紀が横であからさまに納得して無さそうな顔をして唇を突き出すので、その額をぺしっと叩いた。
「イテッ」
「ほら、もういいから離せ。そろそろ教室戻るぞ」
「ちぇー」
しぶしぶではあるが有紀が腕を離してくれたので、俺は体育館の外へ歩き出す。
その後ろからケーイチと佳威が少し遅れて俺の横に並んだ。
「時効の有紀クンもさっさと自分のとこ戻れよ」
佳威が背後を振り返り、笑った。
そんな佳威にケーイチが「佳威…」と呆れ気味に嗜める。
「ハー!?佳威クン感じ悪!…リク!」
有紀の声に後ろを振り向くと、俺たちが離れたのを確認したかのように、有紀の周りに同級生だろう女の子たちが様子を伺いながら近寄り始めていた。
「またあとで連絡するから!」
「おー」
手をぶんぶん振る有紀に、思わず笑みが溢れ俺も手を振り返した。
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