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授業が終わり、よし!帰るか!とカバンに必要最低限の荷物を入れたところで、ケツポケットに入れていた携帯がブブブと震えた。
メールか?と思いながら携帯を取り出すが、マナーモードにしていた携帯は鳴り止むことなくずっと震える。
「電話だ」
ケーイチは先生に呼ばれ職員室へ、佳威はつい先程トイレに行くと言って教室を出て行ってしまったので、今のは完璧な独り言だ。
独り言で漏らしたように、携帯を確認すると着信の文字が表示されていた。名前を確認すると、体育館で連絡先を交換し合った有紀からだった。
そういえばまたあとで連絡するって言ってたな。
なんの用事だろう、と首を捻りながら通話ボタンを押した。
「どーした、有紀」
『あ!リク出た!リク今どこ?』
途端に嬉しそうな有紀の声が携帯越しに聞こえてくる。
電話越しだと少し低く聞こえる有紀の声。電話越しに聞くとなんだか渥に似ているような気がした。
「教室だよ、これから帰るとこ」
『やっぱり!リクって何組なの?』
「C組だけど…なんだよ、一体」
『C組ね!C組~…C組~…、あっ!ホントだ。居た~」
最後らへんは電話越しというより直接耳に入ってきたので、驚いて声の聞こえた方を向くと、ちょうど入り口のところに有紀が顔を覗かせていた。
「えっ?どうしたんだよ、有紀!てかここ、二年の教室…」
有紀が現れたことによって、まだ教室に残っていた数人の女子がキャアと嬉しそうな声をあげる。
予想していた反応とはいえ、弟分だった有紀への反応に、俺としてなんだか複雑な気分だ。
「いーじゃん!迎えに来た!一緒に帰ろ~」
携帯を切りながらこちらに軽い足取りで向かってくる有紀。
「そりゃ別にいいけど…」
「やった!んじゃ、行こっか~」
自然な流れで有紀は俺の手を握った。
流石に、えっ?と思ったが抗議の声を上げる前に有紀は歩き出し教室を出る。
クラスの女子から羨望の眼差しを向けられなんとも言えない気持ちになった。
「ちょっと、おい!有紀!なんだ、この手は。もう子供じゃ無いんだから手繋ぐのは見た目的に無しだろ」
教室を出たところでやっと有紀に向かって言うとクルッと振り返る。その顔は不思議そうに目をくりくりさせていた。
「なんで?高校生になったら手繋いじゃダメなの?」
「ダメ、ではないけど…そういうのは好きな人とか恋人とかとだな…」
俺のこだわりポイントだ。
乙女ポイントとも言う。
「なーんだ!じゃあ俺リクのこと好きだから問題ないね!」
「い、いや、だから、そういう好きじゃなくて…」
お前が俺に懐いていたは知っているが、俺の言いたい好きはそういうことじゃない。
しかし、有紀があまりにも嬉しそうにそう返してくるので俺は反論するのをやめた。
なんだかんだ昔から俺は有紀には甘いところがあった。
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