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「ところで、帰るって俺の家と同じ方向ってこと?」 確かに母親は静香さんとはまたご近所さんになったとは言っていたが。 「俺、寮だよ~?あ、そうだ知ってる?リク!この学校αは寮タダで使えるんだって」 「知ってるよ。ケーイチに聞いた」 「えー!?…渓センパイに先越された~」 悔しそうに呟く有紀に笑ってしまった。 そんなところで張り合ってどうするんだ。 「今日予定ないでしょ?俺の部屋に遊びにきてー!リクと遊びたい!」 予定がないと断定されたことには若干引っかかったが、無邪気な笑顔でお願いされると断るわけにはいかない。 実際、今日は何も予定が無かった。 勝手に帰ったことについては、明日佳威かケーイチに小言を言われるかも知れないが、仕方ない。 ケーイチは先生のところに行ってたので携帯を見られないだろうから、佳威の方に先に帰るという旨の連絡を入れておいた。 例のホテルのような寮のエレベーターに着くと、有紀はウキウキと六階を押す。 「俺の部屋607号室だからね〜。覚えといて!」 「お、おう。分かった」 俺の部屋とは階が違うようだ。 少し待つとエレベーターが一階に降りてきたことを知らせる機会音が響き、扉がゆっくりと開いた。 「………」 エレベーターから降りて有紀の部屋だという607号室の扉を開けた後、俺は少し呆れてしまっていた。なんだろうこの既視感。 簡潔に述べると、有紀の部屋は矢田の部屋と同じような感じだった。 さすがに矢田のように女物の下着とか服が散らばっているわけでは無かったが、物が乱雑に置かれている。 洗濯が終わったのか終わってないのかよく分からないパンツやらTシャツが放り投げられていたり、読み終わった週刊誌(マンガ)や雑誌の類がソファーに投げ捨てられていたりと… とにかく整理整頓された部屋とは程遠い散らかりぶりだった。 有紀はソファーの上にあった雑誌類をなんの躊躇いもなくゴミ箱に捨てて、座る場所を確保する。 俺は散らかりまくった部屋を見渡しながら、ゆっくりと腰を降ろした。 「有紀……お前相変わらず部屋汚いんだな…」 「へ?そーかなー?でも掃除はしてるよ?てか、何飲む?お茶かー、ジュースかー、栄養ドリンクかー、牛乳かー、コーヒーかー」 「飲み物のレパートリー無駄に多いな」 「あっ、カルピスも作れるよ!リク、カルピス好きだったよね?」 「お前…よく覚えてるな」 「あったりまえでしょー!リクが好きだったから俺もコレ好きになったんだもん。常備よ常備」 なんともまあ可愛いことを言いながら、有紀は手慣れた様子でカルピスを作ってくれた。 目の前に置かれたグラスからカラン、と氷同士がぶつかって溶けていく音がした。

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