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…………。
やってしまった……………。
肩で息をしながら、俺は羞恥と後悔に両手で顔を覆う。
クーラーの稼働する音のみが、聞こえる静かな部屋でまさかのゴクン、という何かを飲み込む音が聞こえギョッとした。
だって、何か、なんて、
「ナニ」しかない…
手をそろりとずらすと、膝立ちをして口の端を手の項で拭う有紀が見えた。
俺が見ていることに気付くと、目を細めツヤのある笑顔で口の中を見せてくる。
「んべ。…ちゃんと飲んだよ。リクのってこんな味なんだね。気持ちよかった??」
真っ赤な舌を出して、ほくそ笑む有紀。
言う通り口の中にはなんの液体も残っていなかった。
「お、まえ…、ほんと、意味分かんないしっ…とりあえずうがい!うがいしろ!」
「ヤァーダ。乾いちゃうじゃん」
有紀の手が再び俺の下半身に伸びてきたかと思うとグチ…と、お尻に触れた。
「ひっ…!?」
「わ、すご……Ωの男は女みたいに濡れるって聞いてたけど、ほんとなんだね」
そのままヌルリ、と有紀の細長い指が中に入ってきた。
「や、…!!」
簡単に入ってしまったことを考えると俺が感じてる以上に濡れてるのかも知れない。
俺のような男性Ωは、性的な興奮で女性と同じように下部が濡れるようになる。体が相手を受け入れる準備をしているんだよ、と病院の先生が言っていた。
かと言ってそこを自分で弄ったことも無ければ、誰かに触らせたこともなかった。
「リク分かる?もう後ろぐちょぐちょだよ!…はぁ~…エロ」
「言う、なっ…!てか、抜いてっ」
体の中で違うものが動く感覚に鳥肌が立った。
「ねーえ?リク」
「んっ…!な、んだよ」
下半身の異物感に耐えていると、有紀がゆっくりと俺の名前を呼んだ。
指を入れたまま、体をこちらに乗り出してくるものだから、グッと指が奥に入り込む。
「アッ…!?」
「リクはまだ誰のものでもないよね?」
「……?……う、ん?」
訳のわからない質問にとりあえず頷く。
「よかった!じゃあこのまま番契約しちゃお?」
「は…!?」
まさかの発言に俺は固まってしまった。いま、番契約って言った?
「む、ムリ!何言ってんだよ、有紀!…ひ、アっ」
圧迫感が増して指が増やされたことに気付いた。有紀の長い指にぐりぐりと擦られて、僅かながらにも快感が襲ってくる。
「ここに、俺のを入れてリクの項をガブッとしちゃえば契約成立でしょ?…てか、俺の指あっとゆーまに飲み込んじゃうね」
ペロリと首筋を舐められ、快感よりも焦燥感が強くなった。
「やぁばいね、このにおい。…ゾクゾクする」
熱っぽい吐息。
瞬きを忘れて視線が有紀に奪われる。
――こいつ、…本気だ。
本気で俺と番契約を結ぼうとしてる。
「ゆ、有紀…ほんと、マジで一回指抜いて…っ」
「なんで?気持ちよくない?」
「そうじゃなくて、…」
「あー!そっか、もう俺の入れてってことか!でも、慣らさないと最初は痛いよ?」
それとも痛い方が好き?と猫のような笑みを浮かべて囁く有紀に、マジでヤバイと心臓が早鐘を打つ。
「有紀……!」
涙目で懇願するように見上げると、有紀は微笑みながら開いている手で俺の頬を撫でた。
「リク、かわいい。でもそんな顔、渥にも佳威クンにも見せちゃダメだからね」
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