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なんでこんなときに、渥と佳威の名前が出てくるんだよ…
何とかしないとと焦る気持ちとは裏腹に、絶え間なく与えられる刺激に俺の下半身がまた硬さを取り戻す。
再び反応しだした事に気付いた有紀が、口角を上げた。
「リク、それどーするの?もっ回イッとく?それとも……もう入れていい?」
そう言われた瞬間に、俺の中の危機回避能力がフル稼働した。
目の前にいる有紀に手を伸ばし、グイッと自分に引き寄せる。
「わっ…!」
抱き締める形で有紀を腕の中に収めた。有紀もさすがに予想外だったのか、俺の中を掻き回す動きが止まる。
「なに!?リク…?」
「有紀…、お前は、俺のこと好き…なんだよな?」
「?…うん!好き!大好き!」
「そっか。でも…俺の気持ち無視してこんなことする有紀のことは、好きじゃない…。俺、嫌いになるかも」
「…え!?ヤ、ヤダ!!!」
即答で答える有紀。
嫌だという返事が返ってくることは何となく想定内だった。
「じゃあ、やめてくれるよな…?」
「………俺としたくないってこと?」
「………今はまだそういう気持ちじゃないってことだよ」
あまりにも悲しそうな顔をするので、思わず生ぬるい返事をしてしまった。
「まだ?」
俺の返答にピクリと反応した有紀は、悲しそうなのは演技だったんじゃないかと思う早さで表情を明るくした。
「分かった!今日はやめる!やめるから俺のこと嫌いになるなんて言わないで?ね!約束だよ!」
「…おう」
あれ、俺ちょっとまずい事言ったかな…?
というか俺の危機回避能力の低さたるや。
うまく働かない頭で咄嗟に思い浮かんだ方法ではあったが、有紀じゃなかったら意味なかっただろうし、多分、次は通用しない。
もちろん次が無いこと祈る。
「とりあえず、…指…抜いて」
「んー」
やめると言ったのに曖昧な返事をしながら、有紀の指が何故かまた俺の中で動き出す。
「あっ、……なん、で!?」
「ダイジョーブ。エッチはしない。でもリクこのままじゃツライでしょー??」
もう片方の手で元気になっていた俺の息子を握り締めた有紀は、無害そうな笑顔でにんまり笑った。
ーーー
「……サイッ、アクだ…」
「何がー?」
「お前だよ……」
「えー?意味わかんなーい」
あの後結局イクまで離してくれず、散々な目にあった。
現在は、脱力感に勝てずソファーの上に倒れ込んでいる。
有紀はすぐ側でソファーを背もたれに床に座っていたが、俺の呟きに体をこちらに向けてきた。
有紀の小さな顔を見降ろして、これだけは言っておかねば、と思い出したことを告げる。
「ていうか、そもそもな」
「?」
「俺、いまヒート期間じゃないから番契約成立しないから」
そう言うと、有紀は大きな目を何度か瞬きさせた。
「あ~!あ~!そっか!それ忘れてた…リクいつヒート来るの?」
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