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「あん時はケーイチ達と飯食ってたんだよ。どうせ大した用事じゃないんだろ?」 「大したことあるよ!てか俺ともご飯食べようよ!」 「お前と二人はヤダ」 「え~!?ヒド!じゃあ渓センパイっ、俺も今度一緒にご飯行きたい!です!」 有紀が後ろで、もう一人の後輩男子と交流を図っていたケーイチを振り返った。 「へっ?ご飯?いきなりだね。俺は別にいいけど…」 突然話を振られケーイチが、不思議そうな顔をして答える。 「ヤター!渓センパイいいって!今度行こうね!」 「…まあ、みんなとならいいよ。佳威と喧嘩するなよ」 二人きりにならなければ、害はない。 むしろ昔の話に花が咲いたり、この七年間なにをしていたのかとか、たわいも無い話ができて楽しくもあった。 「喧嘩なんてしてないもん。佳威クンとは桐根のときからあんな感じだよ?」 会えばお互い何かしら言い合って、最後フンッと言った感じで別れる、というのをこの数日間で何度見たことか…。 気があってるのか、あってないのか謎な関係だ。 「イタッ」 お互い気軽に中身のない話をしていると、前方から女の子の声が飛び込んできた。 前を歩いていたのは、俺たちより一つ前のグループの女の子達だ。見るとショートカットの明るい髪をした子が、手を押さえてうずくまっている。 「ユキ…!?どうしたの!?大丈夫?」 隣に居たその子の友達らしき子が、ユキと呼ばれた女の子に近寄って様子を伺う。ゆっくりと進んでいた周りの足が止まった。 「なんかあったのかな」 痛い、と聞こえたからもしかしたら怪我でもしたのかも知れない。座り込んだままの女の子が気になって近寄ろうとしたが、それよりも先に隣に居た有紀が駆け寄っていった。 「ユキちゃーん、どーした?」 「あっ、ゆ、有紀くん…!」 ユキちゃんの傍に寄ると、横から顔を覗き込む。くん付けということは、どうやらユキちゃんは有紀と同じ一年生で顔見知りみたいだ。 「手?怪我したの?」 「うん…多分そこの木に触ったときに切ったみたいで」 ユキちゃんの目線の先には皮が捲れた木があった。最近雨が降らず乾燥した日が続いていたので、硬さが増していたのかもしれない。 「見せて」 パッとユキちゃんの手を取った有紀に、ユキちゃんは真っ赤になった。…おお。ギャルとまでは言わないが見た目が派手だったからか、意外と初心(うぶ)な反応にギャップを感じる。 「わ~、痛そ。とりあえず血流す?…あ、でも水道まだ先だっけ」 まだ山の途中だ。水道なんてあるわけがない。しかしすぐに何かを思いついたのか、有紀はカバンから未開封っぽい水のペットボトルを取り出して、返事を聞く前にダバダバとユキちゃんの血の出ている指にかけた。 「そんなっ、ゴメンね、勿体無いことさせて…」 「なにが?どうせもうヌルくなってて飲む気しなかったし、気にしないでー」 「有紀くん……」

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