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「本当に大丈夫だよ。てか、そろそろ行った方がいいよな?」
これ以上心配されたくなくて、俺は先陣を切って野外炊飯場に向かって歩き出した。後ろで少し顔を見合わせて、ケーイチ達も着いてくる。
「睦人、気分悪くなったらちゃんと言ってね」
「うん、でも多分運動不足が原因だよ。…てか腹減ったな。そういえば佳威!今年のグループはカレー、味わって食べられそうなのか?」
「あー…」
聞いた途端、目に力が無くなった佳威。
「なになにー?佳威クン去年なんかあったの?」
「なんもねえよ」
「明らかに嘘じゃん!教えてよ~」
ニヤニヤしながら佳威に纏わり付く有紀を鬱陶しそうに追い払う様子に、ケーイチと目を合わせて笑った。
野外炊飯場に着くと始まる前から疲れた顔をした佳威と別れ、番号の書かれたプラカードの元へ向かう。
相変わらず外は曇っていたが、屋根付きの炊飯場だったのでこれならいざ雨が降ったとしても問題無さそうだ。
「皆揃ったなー?簡単に説明するぞ!今がだいたい11時だ。13時30分頃には片付け始められるように、各自で時間調整して自由にやれ~。作り方が分かんなかったらプラカードの裏に貼ってあるからそれ見てやるように!それでも分かんないことがあったら言いにきな!」
体育教師がニカッと笑って、静かに説明を聞いていた周りが一気に賑やかになった。というかさっきのは説明のうちに入るんだろうか。大雑把過ぎてプラカードの裏に作り方が書いてあることしか印象に残っていない。
「…めちゃくちゃフリーダムだな」
「まあ目的は交流だからね。じゃあ、俺たちも始めよっか」
「はーい!リク!お米だよ!お米!」
「あー、はいはい。分かったから落ち着け」
「渓先輩、あたしたちはどうしたらいいですか?」
一年生の女の子たちがケーイチの近くに寄って行く。
「とりあえずそこにある野菜洗って切っていこっか。じゃあ、睦人達はご飯よろしくね。お米はここで洗って、かまどはあそこ…ちょっとだけ離れてるんだけど、あそこで炊くようになるから」
一年の時に経験済みのケーイチがテキパキと指示をしてくれる。同じく経験済みのサラダ担当である二年の女の子達も早速野菜に手を伸ばしていた。
「よし、やるか」
なんだか楽しくなってきたぞ。
まあ元々楽しみではあったフレンドキャンプだ。
残念ながら天候は良く無いが、俺も美味しいカレーを食べる為にと、気合いを入れることにした。
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