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有紀が目ざとく反応して、俺の顔を覗き込んでくる。 「ち、近い近い近い!なんでもないよ!」 「あー!目ぇ逸らしたー!うそだ!嘘つき!」 「お前の顔が近いから逸らしただけだ!嘘じゃないって!ほんと別に大したことじゃないんだよ」 「ヤダ!教えてよ!リク」 なおも食い下がる有紀に説明するのが面倒くさくなってきて、どうしたものかと考えている俺を見下ろしながら矢田が眼鏡を押し上げた。 「……君を探せば必然的に佳威にも会えると思ったんだが…、佳威は居ないうえに、まさかの黒澤の弟がいるとはな。君たち一体どういう関係なんだ?」 「将来を約束しあった仲だよねー」 「お前こそしれっと嘘つくなよ!有紀はただの幼馴染だし、佳威はグループが違ったからここにいないだけだから。変な勘繰りやめろよ」 「…なるほど」 矢田が、俺と有紀を交互に見てにやりと笑う。 「俺から見たら君はどこにでもいるような子なんだが…やはり君はあちらの素質があるのかな」 「あちらってどっち?リクはアッチが凄いの??俺にもアッチの方教えてよ!」 「ア、アッチもコッチもねえよ!!てか、どいつもこいつも真っ昼間から下ネタ言うな!」 有紀に至っては絶対分かってて乗っかってきている。くそ、後で覚えてろよ! 「そうだよ!春行くん!ミキ以外の子に興味持っちゃダメって言ったのに…っ」 「ああっ、すまない、ミキ。だけど、俺が興味があるのはミキだけだ。感違いしないでくれ」 何故か嫉妬しているミキちゃんをギュッと大きな体で包み込む矢田。体格差があり過ぎて抱き締めるとミキちゃんの姿がほとんど見えなくなった。 安心してくれ、ミキちゃん。そもそもこいつは俺に興味なんて持ってないよ。どこにでもいるような奴って言われたのしっかり聞いてるからな。 「…ハァ。俺から佳威に伝えとくからもう他所(よそ)でやってくれないか?」 ゲンナリしながらそう伝えると矢田とミキちゃんはやっと離れたが、仲良く手は繋いだままだ。 「そうか!よろしく頼んだぞ。では、またな」 「じゃーねー!おしあわせに~」 手を繋いで戻っていく矢田とミキちゃんに、無邪気にブンブンと手を振る有紀。 俺は心の中で、もう二度と会いませんように…と全力で願った。

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