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矢田の乱入はあったものの無事お米が炊けたのでケーイチ達の元へ戻ると、カレーもサラダももうほとんど完成に近付いていた。 「うわー、いい匂い」 「あ、おかえり睦人。お米上手く炊けた?」 カレーをかき混ぜながらケーイチが振り返る。新妻のような姿があまりにも似合い過ぎていて、ふふっと笑みが零れた。 「上手くいったかどうかは分かんないけど多分食べられるとは思うよ」 「食べられるなら問題ないよ。早いとこはもう食べてるみたいだし、俺たちもそろそろ食べる準備はじめよっか。山下くんもお腹減ったって言ってたし」 「やったー!俺もうお腹ぺこぺこだよ」 「ですよね!俺カレー久々なんで早く食べたいっす!」 ここにきて初めてもう一人の一年男子、山下くんと口をきいた。 今までずっと有紀が隣に居たから、話す機会が無かったのでなんだか嬉しい。ひっそり芝犬みたいで可愛いな、と思っていたのだ。 「山下くんも寮で自炊してるらしくてね、野菜切るのとか凄い手慣れてて助かったよ」 「へ〜!そうなんだ。スゴイね」 「いや、全然っス!渓先輩の方がテキパキしててスゲーすよ!」 「だってさ、ケーイチ」 「え~、そんな褒めても何も出ないよ」 ケーイチが珍しく照れたように笑う。 「……山下くんこの笑顔ほんと癒されると思わない?」 「…正直めっちゃ癒されてます…」 「仲間だ」 俺が山下くんとガシッと握手を交わしている後ろで、有紀はグループの女の子達四人に周りを囲まれていた。 「おかえり、有紀くん!」 「有紀くん、カレーもう出来てるよ。いっしょに食べよ?」 「あたし達のサラダも完成よ。はやく食べちゃお!」 「てか、なかなか戻ってきてくれないから、寂しかった~。有紀くん居ないと元気でない~」 「あ、ほんと?じゃあもう元気出たでしょ?」 「うん、出た出た~!それに有紀くんの炊いてくれたご飯食べられるなんて、やばいよね」 「ねー、やばいよねー。俺もやばーい」 俺に接する以上に適当な相槌を打ちながらも、猫みたいに目を細めてヘラヘラ笑う有紀に女の子達は可愛い可愛いとはしゃいでいる。 有紀だけじゃなくて俺も炊いたとも言えるのだが…まあいいか。あの場に口を出していける勇気は俺には無い。 有紀たちを取り囲む女の子を他のグループの子達が、羨ましそうに見ていたり、怖い顔で見ていたりとなかなか刺激の強そうな空間が出来上がっていた。 今あそこに居なくてよかった、と心底思う。なんだろう、言うなればこのケーイチ達と一緒に居られる場所こそが、最も安全な場所というか…

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