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急に俺の頭越しに登場した有紀に、目の前の山下くんが分かりやすく慌てた。 「く、黒澤!?別に!おっ俺は別になんも悪口とかは言ってねえよ…?そうっすよね!?先輩!」 「そうだよ!ただイケメンで羨ましいって言ってただけだ!むしろ山下くんはお前を褒めてたんだよ、つーか重いから離れろ!」 山下くんに縋るような目で見られて俺の中の兄貴魂に火がついた。 俺の言った事もあながち違っちゃいないし、嘘は言ってないはずだ。 「なに。いつの間に仲良くなったの?早くない?」 しかし、何が気に障ったのか有紀は離れるどころか、さらに後ろから腕を回して来て悲鳴を上げそうになった。 やめろ!こんな人の多いところでスキンシップを図るんじゃない!俺が目の敵にされるだろ…! 「はいはい、ジャレつくのはそこまでにして、黒澤くんも手伝ってくれない?じゃないとカレーにお肉入れてあげないよ」 「え!?ヤダー!お肉食べたい!です!手伝う手伝う~」 見兼ねたケーイチが助け舟を出してくれたおかげで、コロッと機嫌を戻した有紀は素早く俺から離れた。有紀くんがやるなら私達も…とグループの女の子達も手伝い始めてくれる。 というかケーイチ、お肉入れてあげないなんてそんな可愛いこと言うのやめてくれ。 ほんとに同い年の男子高校生なのかといい意味で疑問に思ってしまった。 ーーー 「じゃあ、食べよっか。いただきます」 「いただきまーす!」 全員で取り組むとあっという間に準備が終わり、炊飯場のすぐ近くに設置されてあった木製テーブルとベンチにそれぞれ腰掛ける。ケーイチの声に続いていただきますと声を揃えて手を合わせ、俺たちの昼ご飯が始まった。 周りのテーブルを見ると、ケーイチの言う通りもう何組かは食べ始めていたようで、穏やかに談笑している。 まさに交流会っぽい。 俺たちも例にもれず仲良く談笑… ということにはもちろんならず、有紀はまたもや女の子達に左右を囲まれ、ハーレム状態。 片やこちらはそんな有紀が羨ましいのかスプーンを歯でガジガジしている山下くん、という何とも言えない図が出来上がっていた。 でももう気にするのも面倒臭くて、俺は目の前の出来立てほやほやのお昼ご飯だけに集中することにした。 多分ケーイチと山下くんがメインで作ってくれたであろうカレーをパクリと口に入れる。 カレー特有のスパイシーな刺激と、懐かしい味わいが口いっぱいに広がった。ゴロゴロ入っている野菜達は大きめに切られているのか食べ応え抜群だ。 「美味い!家で食べるのとはまた違うな~」 「外で食べるとなんだか違う気がするよね。まあカレーなんて失敗のしようがないけど、うまくできて良かったよ」 穏やかに微笑むケーイチ。 ああ…癒される。ケーイチはきっといい旦那さんになるよ。俺が保証する。間違いない。 俺達がひとしきり食べ終え、有紀との会話に夢中で食べるのが遅かった女の子達もやっと食べ終えた頃。 もともと悪かった天気がさらに雲行きが怪しくなってきていた。 「これ…なんだか降りそうだね」 食べ終わったお皿を片付けながら、ケーイチが空を見上げてそう呟いた。 俺も同じように空を見上げる。どんよりと先ほどよりも黒い雲が空全体を覆っていた。 確かに今にも降り出しそうな天候だ。

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