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「こいつは俺と同じグループにいた一年生だ。川北っつーんだよ。な」 「あっ、はい。川北メグです」 佳威に言われて、少々上擦りながら自己紹介をしてくれた。 「ど、どうも。浅香です」 「俺は渓だよ。川北さん、佳威はちゃんとカレー作り役に立った?」 「おい、役に立ったってどういうことだ」 「はい!!光田先輩すごい包丁さばき巧くてビックリしちゃいました!カレーもほとんど作ってくれて…あの、美味しかったです…」 途中から自分の興奮具合が恥ずかしくなったのか顔を赤くしながら言葉は尻すぼみになっていった。 照れる女子に男は弱い。お皿を拭いていた山下くんの手が止まった。 「へえ、佳威がね。今年は大丈夫だったんだ」 「つーか俺がやったほうが早いって気付いた」 「え!?ほんとに佳威が作ったのか?ていうか料理出来たの!?」 さらっと言われた驚愕の新事実に思わず話に割って入ってしまったが、俺の驚きように佳威が呆れた顔をする。 「あのな…睦人。俺も一応寮生活してんだ、自炊くらいするわ」 聞くと弁当こそは作ってないが、夜はたまに自分で作ったりしているらしい。 …意外だと言ったら怒るだろうか。 でも確かに、話を戻すと佳威の言うことには一理あった。 去年は佳威にいいところを見せようと周りの子達が敵対心を剥き出しにして大変なことになったわけだ。佳威が全てやってしまえばいいところの見せようも無く、手持ち無沙汰だったはず。 「なるほど、佳威も色々考えてたんだ。でもいいなー、俺も佳威の作ったカレー食べたかった」 「…ということはケーイチの作ったカレーは美味くなかったのか。かわいそーになあ、睦人。また今度作ってやるよ」 「え!?いや、誰もそんなことは…」 「睦人安心して。佳威よりは俺の作ったやつの方が美味しいから。ていうかカレーなんて誰が作っても一緒だから」 「あ?」 「なに?」 「やめてえええ仲良くしてえええ」 なんでこの調子で仲良くなれたのか不思議だよ!隣で川北さんがオロオロしてるじゃん! 「何騒いでるのかと思ったら佳威クンじゃん。どしたの??…あ、メグちゃんもいる~」 女の子達に捕まっていたはずの有紀が、ひょこっと顔を出した。自然な流れで俺の横に並ぶと、川北さんを見て人好きのする笑顔を作る。 「あ、有紀くん。そういえばリカコと同じグループだったね…リカコ、いる?」 「うん、居るよー!リカコちゃーん、メグちゃん来たよ~」 「あ~!メグ~!いらっしゃい!」

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