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川北メグという女の子がΩならその疑問が湧く。
だって佳威は、Ωの発する微量な香りでさえ好き嫌いがハッキリしていて、嫌いなΩの傍には寄り付きさえしない。
そんな佳威が、わざわざ一緒に行動するということは…
「あー、なんかあいつは大丈夫だったんだよな。普通だった」
「ほんとに??いつぶりかな、佳威がそんなこと言ったの」
もちろん、俺がΩなのは周りには内緒なので俺のことは無かったことにしてくれている。
「確かに、甘い匂いしたねー。結構濃かったしそろそろヒートが近いんじゃない??」
「かもな」
2人の会話にΩである俺はあまりピンとこない。女の子特有の甘い香りはしたが、濃いとか薄いとかはさっぱりだ。
ケーイチもβなので強烈なフェロモンなら露知らず、ヒート直前のものなどαほど敏感には分からないだろう。
「しかもあの子絶対佳威クン狙いだよ!目がハートだったもん!相性見るのにちょうどいいじゃん!」
言っている内容が最低なのはさておき、さっきから何故か有紀が川北さんを佳威にゴリ押ししている気がする。そんなにいい子なのかな、川北さんって。
「あのな…俺はお前と違ってそんな軽くねえし、正直どっちでもいいわ」
「いやいや!佳威クンが気にいるΩなんて貴重じゃーん!手に入れとくべきだって」
「………有紀。さっきからえらく俺に川北を推してくるじゃねえか。なんか裏があるんじゃねえだろうな」
佳威も俺と同じことを考えたのか静かに有紀を睨む。佳威の凄む顔は周りの強面さん達を見て育ったからなのか、迫力満点でかなり怖い。関係ない俺が思わずビクついてしまった。
「やだな、そんな睨まないでよ。コワーイ」
そんな俺とは正反対に、有紀は気にした様子もなくいつもの調子でケラケラ笑っている。お前は大丈夫でも俺がヒヤヒヤするから…。お願いだから佳威の機嫌を損ねないで欲しい。
俺の心配を他所に、有紀は話の途中で誰かを見つけてパッと俺たちから離れた。
「あ、ユキちゃんだ!…リク~、俺あの子と約束あるから、寂しいけどまたあとでね!」
言うが早いか有紀はルンルンと足取り軽く向かって行く。見ると確かに山を登っている時に出会ったショートカットで明るい髪のユキちゃんが有紀に向かって手を振っていた。すごく嬉しそうな顔。有紀に会えるのが相当楽しみだったんだろう、きっと。
「なんだ、あいつ」
「ごめん。ああいう奴だから気にしないで…」
呆れたように呟く佳威に、仕方なく俺が謝った。
「ユキちゃん………俺が狙ってたのに……」
さらに横から皿を拭き終えた山下くんのショックを隠し切れない声が聞こえて、そちらにもゴメンな…とやるせない気持ちで謝った。
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