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「え、番になったの?あの二人が?」
「マジか。あいつ番候補とか舐めたこと言ってっから、卒業するまでΩ食い荒らすだけ食い荒らして契約するつもりねえのかと思ってたけど」
「佳威ってほんと矢田のこと嫌いだよね」
「好きじゃねえな」
眉間に皺を寄せて佳威が言う。
俺との一件など関係ないぐらい真底嫌ってるようだ。
俺たちはいつもの三人でどこに行くでもなく、コテージの外にあるベンチに座ってのんびりしていた。
ほとんどの生徒達は湖に行っているみたいでコテージには生徒の姿がほぼ見えない。
先生も何人か湖の方へと監視で行っているようで、こちら側には留守番のように一人しか居ないようだった。
「でも矢田がミキちゃんと番契約したのは何となくわかるんだよな」
報告する必要が本当にあるのか微妙だが時間があるので、矢田に遭遇したこと、そしてミキちゃんと矢田が番になったことを話していた。
「どうして?」
「あいつさ、ミキちゃんと別れた後ものすごい引きずってたんだよ。しかもミキちゃんが惚れたのは佳威っていうαだろ?佳威はなんとも思ってなかったみたいだけど、もし佳威がミキちゃんと番契約しちゃったらもう二度と一緒になれないわけじゃんか。そうことかなーて…」
要は矢田が佳威の存在に脅かされ焦ったのだ。
奪われるかもしれない、という恐怖にタイミング良く起きたミキちゃんのヒート。
手に入れる為、番という夫婦や家族よりも深く根深い鎖で繋いだんだ。
むしろ、そこまでαに求められるミキちゃんが凄いと思う。まあ、あの可愛さだ。矢田が求める気持ちも分かる。
ただ、謎なことが一つあった。
「でも俺、矢田よりミキちゃんのが不思議でならないんだよな。あんなに佳威のこと好きで俺に忠告までしてきたのに、あんなコロッと気持ちが変わるものなのかな」
「そもそもあいつが睦人に忠告しにくる意味が分かんねえよな。睦人はβなんだから、敵にもなんねえだろ」
ギクッ
やば。俺いま自分で墓穴掘った。
サーと顔の血が引くのを感じると同時にケーイチが素早く話題をずらしてくれた。
「あれじゃない?矢田と番になったから、気持ちが全部矢田に向いたんじゃないかな。そういうものだよね、番契約って」
「あ、ああ!そっか。そうだよな。忘れてた!」
あああケーイチ!ナイスフォロー!
感謝の気持ちを込めて目配せをすると、気付いて優しく微笑んでくれる。
俺はケーイチの言葉に、そういえばそうだったと思い出した。
番契約をすると見えない部分で心の繋がりが深くなる。特にΩ側の精神面は顕著で、例え離れようとしていた心でも、番となれば執着が強くなるし愛しさが湧いてくると聞く。
情報としては知っていたが、それを目の当たりにしたのが初めてだったので失念していた。
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