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もはや下半身がどうのこうのと言っている場合では無くなり、壁に体重を預けグッと力を入れて立ち上がる。今度は何とか足に力が入った。そのまま、佳威の体を押して、ダッと外に飛び出す。
「睦人…!?」
外は夕立ちのように激しく雨が降り、遠くでゴロゴロと雷の鳴る音が聞こえた。
俺は全身が濡れることも気にせず、トイレの裏側に周り、草木の生い茂る森の中へ駆け出した。
冷たい雨に濡れているというのに相変わらず身体は熱い。動悸もする。下半身だって相変わらず主張が激しいし、お腹の奥に違和感も感じた。
それでも俺はとにかく一人になりたくて、森の中へ走った。
「睦人!おい!」
しかし、後ろから佳威の追ってくる声が聞こえて、俺は焦ってもっとスピードをあげる。
「待てって!!」
「うわっ…!」
だが身体の不調な俺は、万全な体調である佳威に勝てるはずも無く呆気なく捕まってしまった。
腕を掴まれ、俺が逃げないようにそのまますぐ近くにあった大木に押し付けられる。少し強引な力に、背中に痛みが走った。
「いた…!」
「あ、わりぃ!大丈夫か?…つか、なんで逃げるんだよ」
「………」
佳威は雨に濡れて顔に張り付く髪の毛が鬱陶しいのか、片手で髪をかきあげる。
その姿に何故かドキリとした。
「お前、風邪っぽいんだろ?こんなとこでこんなに濡れて余計悪化したらどうすんだよ。…戻るぞ」
俺の全身びしょ濡れの姿を見て、そっと目を逸らした佳威は、俺の腕を持って元来た道を戻ろうとした。
見ちゃったかな。
変態だ、と思われただろうか。
「………」
雨で服が体に張り付き、程よく筋肉のついた背中が見え、ゴクリと喉が鳴った。
脳内では、駄目だ。だめだ。やめろ。そんなことしたらいけない、と警告しているのに、俺の体は俺の意思に反して、その逞しい背中に腕を回していた。
――どうやら、俺は頭がおかしくなってしまったようだ。
「! 」
突然の行動に驚いたのか、佳威の動揺が背中越しに伝わって来た。
「佳威……」
「睦人…?」
「佳威、おねがい、があるんだけど…」
「…なに?」
「………」
少し羞恥が残っていたのか、口には出さずそのかわり俺は佳威の腰あたりに、自分の硬くなった箇所を控えめに押し当てた。
多分、すぐにわかったと思う。
何をやってるんだ、と普段の俺なら顔から火が出る行為なのに、今はそこまで考えられない。
とにかく佳威にここにいて欲しかった。
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