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触って欲しい期待と、この状態で触られたらどうなってしまうのかという恐怖。無意識にギュッと佳威の服を掴んだ。
「…睦人」
「ん…?」
「お前のフェロモンほんとやべえよ。こんないい匂いしてるやつ…初めてだ」
首元に顔を寄せる佳威の声が低く心地よく脳内に響く。
「………それって…川北、さんよりも、…?」
つい名前が出てしまった。
靄がかかったみたいな脳内でも昼間のことを覚えていたみたいで、佳威が大丈夫だと言った川北さんの顔が脳裏を掠めた。そんなつもりはなかったのに頭のどこかで同じΩだというだけで意識していたのか。
佳威は俺の相手じゃない。番でもない。ならばこんな思いを持つのはおかしい。
突如湧き出す焦燥感に首を傾げる。
佳威の瞳が真っ直ぐに俺を見つめていた。
その目はズルい。
そんな目で見つめられたらただでさえ早い鼓動が、さらに早くなって息がしづらくなる。
「当たり前だろ…、比べるまでもねえよ」
佳威が俺を安心させてくれるように、静かに微笑んだ。
ケーイチみたいに優しく、勘違いかも知れないが愛情を感じる笑顔。
息が止まるんじゃないかと思うくらいの衝撃だった。
「佳威…」
胸の奥からこみ上げるような愛しさを感じ、俺は自ら佳威に頬を寄せる。
佳威は俺の後ろ頭を抱き込み、さらに密着するように…まるで離さないとでも行動で示してくれるような動きに女の子のように胸が高鳴った。
肌に直接触れている腕は、俺の腰を力強く抱き寄せ下半身が密着する。その僅かな刺激さえも今の俺には気持ちいい。
「佳威、俺…、こういうの初めてだから…うまくできないかもだけど……」
そう控えめに言うと、分かりやすく佳威の動きが止まった。
「…睦人。発情したの初めてなの、か?」
「ん…?…うん、そうだけど…」
頷く俺に佳威は一瞬固まった後、大きくため息をついた。
「はあぁ……マジか……」
「………??」
「…仕方ねえか」
佳威は意味のわからない台詞を吐き、少し体を離すとおもむろに手に持っていたΩ用の抑制剤を口に入れた。
「…っえ!?佳威!?だ、ダメだっ…それは佳威が飲んでも意味なっ……」
そこまで言って俺は最後まで言い切ることなく、佳威によって唇を塞がれていた。
「ふ、………!」
柔らかい感触。背の高い佳威に合わせて俺は顔を上に上げる。
ぬるっとした感触とともに固形物が流れ込んで来た。
抑制剤だと直ぐに気付いてイヤイヤと顔を背けようとしたが、後頭部を掴まれ身動きできない。
あとで吐き出そうとキスを拒んで口を閉じると、佳威が低い声で囁いた。
「口、開けろ」
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