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威圧的で命令されるような口調に、驚いて閉じていた口を開ける。
入り込んでくる舌と共に唾液が落とされた。
「んむっ…」
「吐き出すな。飲めよ」
「………ん」
仕方なくどちらの唾液かも分からない液体ごと、ゴクンと飲み込んだ。抑制剤は喉に引っかかることなく、滑らかに胃に落ちていく。
再び唇が重なり、本当に飲み込んだかどうか探るように佳威の舌が口内を弄るが、ない事を確認するとチュというリップ音とともに唇が離れていった。
相変わらずキスの間の息継ぎが上手く分からない俺がハアハアと荒い息をしていると、佳威が俺を抱き締めて頭を撫でた。
「ちゃんと飲んだな、えらいぞ」
「う…、なんで飲ませるんだよ…。俺と…したくないの、かよ」
悲しい気持ちになりながらそう言うと、肩口を服の上からガブリと噛まれた。
「いたっ…」
「んなわけねえだろ!こんな匂いさせてるやつ前にして…超してえよ。めっちゃ我慢してんだ、分かるだろ」
下半身をわざと押し付けられ、形の分かるほど硬いものが触れる。言葉通り分かりやすい反応に自然と顔が熱くなった。
佳威も俺に対して欲情してくれていたという事実が嬉しいのに、では何故、と疑問も浮かぶ。
「…ヒート初めてなら訳わかんねえだろ。そんな状態でヤったって後で後悔すんのはお前だぞ。…そんなん嫌だろ?」
「佳威……」
佳威だってΩである俺のフェロモンに当てられてキツイはずなのに。むしろ我慢できているのが不思議な程で。
どれだけ我慢しているのかなんてΩの俺には想像もつかない。だけど、佳威の優しさが身体中に染み入ってくる。
「…つーか、処女の初めてが青姦ってどうよ、て話だしな」
「………なんでみんな俺が処女だって、分かんの…?」
「おい、みんなって誰だよ。そっちの方が聞き捨てならねえぞ」
「あっ…違…え、…すっ据え膳食わぬは男の恥だぞ!」
頭が回らない中ただでさえ近いのにさらに詰め寄られてテンパった。言いたいことはこれじゃない。言った後に後悔したがもう遅い。
「あぁ!?人が折角気ぃ使ったってのに…お前じゃなかったらとっくに食ってるっつの!つーかそんなこと言うならマジで犯すぞゴラ」
「ヒッ…嘘っ、嘘ですーーー!!」
叫びながら体を離した瞬間、俺の意識はそこでプツンと切れた。
後になって冷静に考えれば多分初めてのヒートに脳が追いつかなかったんだと思う。意識が飛ぶ寸前、佳威の力強い腕がフラリと倒れる俺の体を支えてきてくれたことだけは何となく分かった。
その後のことはよく覚えてない。
一度バスに揺られている時に目が覚めた。行きと同じように窓際に座っていて、外に目をやるとまだ強い雨が降っていた。暗雲が立ち込め辺りは真っ暗。時折稲妻の光が窓ガラス越しに見えた。
反対側を見ると佳威が座席に浅めに腰掛け腕を組んで眠っている。前の席に膝がぴったりくっ付いていて、まるで通せんぼをしているみたいだった。
通路を挟んだ向こう側にはケーイチの姿が見えて、参考書か何かを読んでるようで俺には気付いていない。
身体は怠く脱力感を感じたが、下半身はもう大人しくなっていて、もちろんゾクゾクもしない。
ただ体が寒かった。
ズキンと痛む頭に顔をしかめ、俺はバスの揺れを体に感じながら、再び虚ろになる意識の中に落ちていった。
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