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第7.5話 ◎
(第三者視点)
一瞬、ほんの一瞬だけ、Ωの香りを感じた。
薄暗い室内でただ己の快感の為だけに動かしていた腰を止めて後ろを振り返る。来た時には気付かなかったが磨りガラス状の窓がほんの少し空いていた。
「あそこ、空いてたっけー?」
「や、止めないで、有紀くん…!」
返答を期待していた訳ではないがまるで聞こえていないような女に視線を戻して、有紀は小さく欠伸をした。相手にバレることなど全く気にしていない。
一応楽しんでいたつもりだったが、一瞬香った匂いの方が酷く魅力的で急に目の前の人物から興味が失せてしまったのだ。
「ねえ、抜いていい?」
女が目を見開く。
質問をしておきながら、これこそ返答を望んでいないのにと有紀は笑いそうになった。
柔らかく白い肌を上気させてショートカットの髪が机の上で乱れる。有紀の言葉に女は片手で口元を抑え、もう片方の手で自分と繋がる相手の腕を掴んだ。
「ゴム、のこと?…いいよ、取っても。中で大丈夫だよ?」
「あー」
これが愛する人の発言だったならなんと甘い誘惑か。しかし有紀からすれば検討違いの台詞に、萎えかけていた気分がさらに降下していった。一気に。まさに急降下。
ズルッ、
躊躇いもなく自身を抜き、着けていた薄っぺらいゴムを取る。そして、そのまま再度挿入を期待していた女の上半身へ乗り上げた。
「えっ?ゆ、ぅき…くん?」
「ごめん、萎えちゃった。綺麗にしてくれる?」
「あ……そっか、ごめんね」
「んーん、ユキちゃんは悪くないよー」
素直に謝る女――ユキの頭を撫でた。見た目は強気そうに感じたのに。実際は全然そんなことなかった。αの自分に従順で常に下手に出る。機嫌を伺い好かれようと媚を売ってくる。
分かりやすくて嫌いじゃない。まどろっこしいのは嫌いだ。だから相手に選んだのに。
「ねーえ、ユキちゃん」
自分の下半身に顔を埋めて言葉通り綺麗にしてくれるユキの頭に手を置いたまま有紀が猫撫で声で呼んだ。
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