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02 ◎

ユキが口に含んだまま目だけを上に向ける。化粧が少し落ちて目の下が黒くなっていた。 ブッサイクだなあ〜 この場に睦人が居れば「はあ?ちょっとギャルっぽいけどめっちゃ美人だろ!」と怒るような子に対してそれはもう失礼な事を考えながら、有紀は猫みたいに笑う。 「さっきゴム外してって言ったけどさあ、赤ちゃん欲しかったの?俺の」 答えは聞かなくても分かる。手を置いていた頭が前後に揺れた。 ああ、そう。そうね、やっぱり。みんな狙ってくるもんね。だから、俺はお前らの用意してるゴムなんて使わないの、知ってる? 自分の答えに有紀がどんな反応をするのか気になったのか、ユキの視線が再び上を向く。 視線の先のユキを見下ろす顔はちょうど影になっていて表情が見えない。元々天気も良くなく明るくない室内だが、急に辺りが暗くなっていた。雨だ。土砂降りの大雨。 目を凝らしたユキの視界の中でピシャッと閃光が走った。 「!」 ほんの一瞬だけ照らされた有紀の端整な顔立ちに、ユキの体が固まる。 「あげないよ?俺の赤ちゃん産むのはユキちゃんじゃない。産んでもらう人、もう決めてるから。ざんねんでした」 髪の毛に触れていた手を離して、ユキに向かってひらひらと左右に手を振った。 有紀は呆然とするユキの顔から目を離し、先程の香りを思い出していた。一体どこのΩが覗いていたのか。この学園にはΩの数が多く匂いで相手までは特定できない。 αがいるというのに入って来なかったということはそもそもΩではなかったのか、それともαがいるから逃げたのか。雨が降ったのも関係して最早匂いも消えてしまってどこに向かったのかも分からない。 それにしても凄い雨だ。 リクは今なにしてるんだろ。 濡れてないよね? 大丈夫かな? やっぱりリクと一緒にいればよかったなー こんなとこ、つまんない。 豪雨の音が室内に響きわたる中、そんな事をぼんやり考えながら有紀はまた小さく欠伸をした。

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