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「…へ、え、なに?いきなり」 ケーイチが珍しく少し狼狽えたような声を上げるので、なかなか見られない新鮮味を感じながら笑いかけた。 「なんか安心するよ。最近ちょっと不安なことも多いけどさ、ケーイチの笑顔見てたら大丈夫だって思っちゃう。助かってるんだ、本当に…ありがとう」 「………え、そんな、やめてよ。俺は別に、友達として当たり前のことをしてるまでで、そんな風に言われると…」 いつものようにスラスラと喋れないのか、歯切れの悪い言葉を呟きながら、ケーイチが俺から目を逸らした。 「ケーイチ?」 優しさに触れて嬉しかったことを伝えたつもりだったが、ちょっと臭すぎたかな?もしかして引いてる?なんて思っているとケーイチが勢い良く顔を上げた。 「睦人のバカ!」 「バカ!?え…?そ、そりゃケーイチから言わせたら俺なんて底辺のバカかもしんないけど…なんだよ突然!」 「そういう意味のバカじゃない!…知ってる?睦人みたいな人のことをタラシって言うんだよ」 人をタラせる容姿をしてないので、そんなこと言われたのは初めてだ。何故いきなり罵倒されたのか意味が分からず、ケーイチを見ると心なしか血色よく見える。 …んん? もしかして。 「………ケーイチさん…照れ隠しっすか?」 「はあ?違うよ、ちがう。違うからね睦人。全然そんなんじゃ……、…帰る」 ケーイチは再度プイっと顔を背けると、玄関の方に向かって行ってしまう。 焦るなんて言葉が似合わない程、落ち着いていてしっかり者のケーイチの珍しい反応に驚いた。 本当にこのまま帰るのか?と玄関で靴を履く後ろ姿に向かって呼び掛けると、少し間を置いて振り向いてくれた。 「…俺だって、睦人の素直にお礼言ってくれるとこ好きだよ。これからも俺に頼ってね。じゃあ、また月曜日」 「!…う、うん…またな」 俺の返事に満足そうに微笑むと、静かに扉を閉めてケーイチは部屋を出て行った。 ………………やり返された。 どっちがタラシだか。 ケーイチが去った今、一人部屋で照れるのは俺の番だった。きっと今この場に佳威が居たら、また「お前ら恥ずかしいこと言い合ってんじゃねえよ、他所でやれ他所で」とか言われるんだ。 ケーイチめ、照れてたと思ったのに、油断ならない。 「うう、………シャワー浴びよ…」 なんだか、すっごくむず痒い。

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