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「…はあ~、あったまイタ…」
自宅までの道を帰りながら俺はズキズキと痛む頭を押さえた。
本当は買い物中にケーイチが家まで送ると言ってくれていたのだが、いくらなんでも友達にそこまでさせられないと断固拒否した。
送り迎えしてもらうなんて女の子じゃあるまいし、申し訳なさ過ぎる。俺は出来るだけケーイチと対等な関係で居たい。
抑制剤は様々な種類が存在するが、どれもだいたい24時間後に効果が薄くなる仕組みだ。
逆に言うと24時間は確実にヒートを抑えておけることができる。
そして俺の初めて服用することになった抑制剤は即効性の強いもの。最初はヒートが来たことが分からず飲むタイミングを失ってしまったが次はきっと大丈夫だ。どういう症状がヒートなのか既に体験済みなので把握できている。
というわけで問題ないから心配しないでくれ!と力説すると、渋々ながらようやく納得してくれた。本当にお兄ちゃん属性に恥じない心配性っぷりだ。もちろん、ありがたいんだけどね。
ただ問題が一つ。
その24時間続く効果のおかげで現在、絶賛酷い頭痛に襲われていた。風邪はよく引くが、普段偏頭痛など持っていないので結構つらい。
――完全に副作用だよな…これ。
少しでも良くならないかとこめかみの部分をぐりぐりと押すが、痛みが軽減されるのは一瞬だけで、手を離すとすぐに痛みが戻ってくる。
副作用が出たら使用を控えてねと、医師からは言われていたが、いま控えたら大変なことになるから無理だ。
こんな時に相手が居たらな…と少し弱気な事を考えてしまう。
24時間休薬時間を置かないと違う種類の抑制剤は使えないし、今回は継続して使うしか方法が無い。だけど、次回からは違う種類の抑制剤に変えて試してみたほうがいいかも知れない。
ヒートってほんと面倒臭い。
気が重くなるなか、俺は何とか自宅の前に辿り着いた。
時間帯的には多分母親がパートから帰ってきてる時間帯だ。
ガチャと扉を開けると中から楽しそうな笑い声。
誰か来てるのか?と、とりあえず母親に顔だけは見せようとリビングに顔を出した俺だったが、頭痛のことも忘れてボトリ、と持っていたカバンを落としてしまった。
こういうの、あれだろ?
デジャヴって言うんだろ。
「あらっ?どうしたの?りっちゃん!なんで帰ってきてるの?」
母親の驚く声に、帰ってきたら悪いのか、と反抗する気力もなく俺の視線はその横にいる奴に釘付けになっていた。
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