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政略結婚か… 渥の親父さんとの記憶は殆ど無いが、確かに二人が一緒にいるところはあまり見たこととがなかったな、と思う。 渥の口から聞く、俺と別れた後の家族の話だ。 母親に聞いてから何となく気になっていたことだ。おばさん達が離婚をしたあと渥達兄弟がどうしてたのか…渥には距離を置かれていた為もちろん聞けなかったし、有紀にもタイミングが掴めず聞けていなかった。 結局渥の口から聞くことになるとは思わなかったが、話してくれて少し嬉しいと思ってしまうのはやはり不謹慎なんだろうな。 「渥が一人で住んでるってことは、有紀も一人暮らししてるのか?」 「有紀も同じマンションにいるよ。まあ、あいつは今はほとんど寮の方にしか居ないけど」 「へえ…渥は?」 「俺?俺は行ったり来たりしてる……お前質問ばっかだな」 言いながらベッドから立ち上がった渥は、スッと綺麗に背筋を伸ばす。ただ立ち上がる、それだけの仕草が酷く美しく、目を奪われた。 「もうお喋りは終わりだ。お前、顔色ヤバイよ。そこ貸してやるから寝たら?」 立ち上がった渥は少し面倒くさそうにこちらを見下ろして、ベットの方を顎で示す。ぞんざいな態度ではあったが反して言っている言葉には気遣いが感じられて、渥からそんな言葉が出てくるとは思わず驚いてしまった。 「…もしかして寝室に呼んだのはその為?」 「さあ。お好きなように」 「なんだ、ビックリしたじゃん」 「期待した?」 「ち、違うわ!………でも、嬉しい。ありがと渥」 からかうような渥に否定の言葉を返しながら内心、心が温かくなるのを感じた。 どうしたもんかな。 かなり嬉しい。 再会してから初めてと言っていいほど貴重な渥の優しさに触れ、堪らず笑顔でお礼を言うと渥はまたいつもの無表情に戻ってしまった。 なんでだ… なんとも腑に落ちないでいると、渥が思い出したように口を開く。 「…お前、抑制剤で過ごすって言ってたけど持ってるの?」 「?…うん、あるよ。ちゃんと一週間分」 「どこに?」 「財布の中!即効性のあるやつだしバッチリだ。…あ、もちろん渥には迷惑かけないから」 抑制剤のことなんてそんなに気になるか?と思ったがαの渥からしたら俺が欲情なんてしてしまったら、たまったもんじゃないんだろう。 佳威には多大なる迷惑をかけてしまったので、同じ轍を踏むわけにはいかない。

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