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歩いて15分程の距離にある小学校に辿り着くと、俺と手を繋いで歩いていた有紀が「リクたちの教室にいきたい」と可愛く俺の顔を見上げた。 学校はもちろん休みだったが、先生付き添いのもとサッカークラブが練習をやっていたので、渥と二人先生の所に行き、宿題を持って帰るのを忘れた、と嘘をついて鍵を貸してもらった。 さらっと嘘をつける渥に、なんて悪い奴だとニヤニヤしながら肘でつつくとどうだと言わんばかりに笑う。 懐かしい感覚に胸が熱くなってしまった。 過去の記憶なのに、現実の感情が交差していた。 「なんか、いつもと違うかんじするよなあ。休みの学校って」 「人がいないからじゃない?あと私服」 教室に入りながら渥が俺の言葉にさも当たり前かのように答える。自分の分からないことをすぐに答えてくれる渥に、は~!なるほど!と感心する。 「有紀、なにしてるんだ?」 有紀は俺たちから離れ一人ペタペタと歩いて行き、一つの席にぺたんと座る。小柄な有紀に机の方が大きく見えた。 「ここでしょお?リクの席」 にへら、と笑う有紀。ああ、そういえばそこは俺の席だったなと思い出しながら近寄ると後ろから渥も付いて来た。 「あーあ。…ぼくも、リクとアッちゃんと同い年に生まれたかったなあ。なんで、ぼくだけ一個下なのー?」 机に突っ伏しながら、有紀は唇を突き出して不満そうにぼやいた。 「俺、おまえと双子なんてイヤなんだけど」 「そんなの、ぼくもだもん!……でも、いっしょがよかったの」 渥の呆れた声に、有紀がムキになって言い返したと思ったら、隣の席に座った俺を見て突然寂しそうに声が小さくなる。 「そしたら、勉強だって体育だって、いっしょにできるでしょ…?」 「勉強は家で三人ですることもあるだろ」 「でも、でも、ぼく教えられてるだけで…ぼくだって教えたい」

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