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「……」 渥は有紀の言いたいことが分かったのか何も言わず、有紀の頭にポンと手を置いて机の上に座った。 俺もショボくれる有紀が可愛く見えて、椅子を引きずりながら近くに寄り、同じように優しく撫でてやる。 「ゆーき!おまえが俺たちに勉強教えられなくたって友達にはかわりないんだぞ」 「俺にとっては弟だけどな」 「渥、余計なこというな」 ジロ…と睨むと、やれやれと言うように顔を逸らして笑う。まるで子供らしくない笑い方だ。 「リク…でも、リク達が卒業したら、ぼくひとり残されるんだよ?…卒業しても、ぼくとあそんでくれる?」 天真爛漫という言葉がぴったりだった有紀が、らしくない不安そうな顔で俺を見つめた。 幼心に胸を掴まれ、思わずぎゅーっと有紀の小さな体を抱き締める。 「あったりまえだろ!有紀も渥もおれも、ずーとずーっと一緒だよ。一生友達だ!」 俺の言葉に安心したように笑う有紀。渥も静かに微笑んでいて、和やかな空気が三人の間に流れていく。 ずーと一緒。 一生友達。 心から思っていたし、昔はそう信じて疑わなかった。 毎日遊んで、笑って、喧嘩して。 時には子供らしくない話をしたり、その輪にクラスメイトが入って来たりしてわいわい過ごす。それでも結局最後は三人で…そういうのが大人になるまで続くと思ってた。 バース検査が将来を分けたとでも言うのか。 ただ、昔のように笑い合いたいだけなんだ。 せっかく再会したというのに、未だに三人で顔を合わせる機会など無い。 ようやく渥が俺に優しさを向けてくれたように思えた。 このまま戻れないだろうか。 昔の俺達に。 αもΩも関係なく、ただ純粋だったあの頃に。 戻れないだろうか。

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