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「バッ…!?」 バカなにやってんだ!と非難してやろうとしたものの今はそんな時間さえも惜しく、一秒でも早くこの熱を抑えたくて投げ捨てられた場所へと足を向ける。 しかし駆け出す前に俺の腕を渥が痛いくらいに掴んできて、触れられた場所からじわり…と熱が広がった。 「な、…に…?」 「お前こそ、どこまで馬鹿なの。一日飲むの我慢してさっさと薬変えろ。それか光田にやっぱり相手してくれって頼み込んでこいよ。連れてくくらいしてやるから」 「…っそんなの、無理に決まってるだろ!薬無しでヒート一日我慢するなんて、俺には無理だよ…!それに佳威は大切な友達だから、自分の欲望満たすためだけに利用するみたいなこと…したくない…」 佳威が我慢して抑制剤を飲ませてくれたから良かったものの、そうでなければ今頃どうなっていたかも分からない。 きっと俺は今以上に罪悪感を感じて距離を取り、もしかすると元のような友人関係には戻れなかったかもしれない。 そんな風に考えると自分に眠っていたΩの性が本当に恐ろしく思えてくるし、αとΩの関係性はギリギリで均衡を保っているのだとヒシヒシと感じる。 「…てか……腕、離せ…」 ただ今は分析している場合ではない。目の前で握られた腕が熱い。強く掴まれた箇所に神経が集中しているようにぞわぞわと鳥肌が立ってくる。 触れられたくない。 触れられたい。 離して。 離さないで。 心の中で俺の理性とΩの本能が対立しているみたいにグラグラ揺れる。 ――お願いだから、もう少し我慢してくれよ…! 祈るような気持ちに反して、渥は腕を離すどころかグイッと力任せに俺の体を引き寄せた。 「っ…」 上手く力が入らず、すんなりと体が渥の腕の中に落ちαの香りに一際大きく心臓が脈打った。この衝動はヒートの初日に佳威が現れたときとよく似てる。やはり俺の体はαに反応してるんだ、と認識を深めるとすぐ近くで耳に心地よい低声が響いた。 「お前はもう少し自分がΩなことを自覚した方がいい。無知だったあの頃とは違うんだ」 悟すような物言いに、目の前に広がっていた渥のシャツから顔を離してそろり…と見上げる。 暗闇に目が慣れてしまったのか距離が近いからなのか、それとも両方なのか。見慣れた筈の渥の彫刻のような美しさに目を奪われてしまった。 「………あ…つ…」 αの香りに理性がドロドロと溶け出していく。 駄目だ。 もう。 嫌われるかも知れない。 きっと今以上に距離が開く。 でも、そんなのどうだっていいじゃないか。 「………渥、……お、れ」 ――親友には戻れないけどね。

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