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いつ噛まれてもおかしくない。 ヒート時の性行為中に傷を付ける項の契約。 今、俺は渥といつでも番になれてしまう。例え番うことを俺が心から望んでいなかったとしても。 つまり、Ωである自分にとっては最も危険な体勢なのだ。何が何でも拒まなければいけない筈なのに。 ――それでもいい。 この蕩けそうな快楽を与えてくれてる相手。 今この瞬間に俺だけを見てくれてるなら…繋がれたっていい。 人生を左右するといっても過言ではない重要事項だと分かりつつ、流されてしまう。それほどまでにΩの本能は俺の理性を喰らい尽くし、思考を奪い去っていく。 質問の意図を、感情の奥を、深く読み取ることができない。 「ん…!…すき……、すきだよ」 少し体を捻らせて、背後にいる渥を見る。口から勝手に零れ出す言葉。完全には把握できないが確かに目は合った。 「渥、は…?…おれのこと、すき…?」 「………」 絡まった視線の先の漆黒の瞳は、確かに欲に溺れながらも、想いは違うところにあるように、淀む。 「…こうやって、誘惑されたのか…あの人も」 ボソリと呟かれた言葉。 感情の無い、沼の底に落ち行くような掠れた低音。 「渥…?…ッんぐ」 「もういい。黙れ」 項から唇が離れたと思ったら、腕が顔の方に伸びて来て、その大きな手で口元を塞がれた。 「んんッ…!?」 「教えてやるよ、睦人。お前の感じてるものは恋でも愛でもなんでも無い。ただΩのヒートに狂わされてるだけの、偽りの感情だ」 口を塞がれながら強く腰を打ち付けられ、考えることよりも強烈な快楽へと引きずり込まれるように溺れていく。 俺に触れてくる全てが愛おしく感じてしまい、塞ぐ手を舐めた。舐めた指が、ぐにっと乱暴に俺の口に侵入して来て唾液が溢れるが、指がある所為で閉じることができない。 だから当然のようにそのまま渥の指ごと舐めた。 「はは。俺の指は美味しい?…そうやって煽って、誘って、お前のフェロモンがαを縛り付けるんだよ?」 「ふっ、…う…ン」 「αとΩが本気で愛し合って、いいことなんて何一つない。あるわけない」 「アッ、渥……あ、つ」 「それでも愛してるやるよ。…今だけは」

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