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流れるような意識の中で覚えているのは、それから何度も触れて、繋がって、果てて、俺を覆う体に腕を回した。何度も目の前の唇と、自分の唇を重ね、まるで愛し愛される恋人同士のような行為に溺れていった。 ただひたすら気持ち良くて、満たされていて、幸せだと感じた。 恋でも愛でもない、お前の抱いてる感情は偽物だ、と突き離すように吐き出す口から紡ぎ出される俺の名前は色情を孕み、艶やかで、熱っぽい。 これがαとの交わりなのか、と。 唯一、番として繋がり合える種なのか、と湧き上がる感情によく分からない涙が溢れた。 頭の回らない今は耳に飛び込んでくる言葉の意味が理解できない。 この想いはなんなのだ。 愛情ではないのか。 熱情ではないのか。 ――偽物だとしたら俺の本当の感情はどこにある? 突き付けられた言葉と己の感情に心を乱されながら、与えられる快楽にただただその身を委ねて。 胸に抱くこの想いの名を、探していた。 ーーー 「…ん……」 一度飛んでいた意識から目が覚めると、自分はベッドの中だというのに隣に渥の姿が無かった。 渥が居ない、その事実が異常な程不安に感じてしまい飛び起きる。怠さと違和感を覚える腰など、気にしていられず寝室を出ると渥はソファーに寝転び、また何か分厚い本を読んでいた。 「渥!」 「…お目覚めデスカ?」 手にした本から視線が上がるのを待たず、俺は渥の傍に駆け寄るとその首にぎゅうと抱き付いた。そのまま渥の纏う香りを肺いっぱいに吸い込んで、ようやく少しだけ落ち着くことができた。 「…どこに行ったのかと…っ」 「甘えるねえ」 のんびりと笑いながら渥が俺ごと起き上がる。分厚い本を机に置きながら俺を自分の膝の上に乗せた。 「服も着られないほど、怖かった?俺が居なくて」 指が胸をツツ…と辿って、やっと気付く。そういえば何も着ていない。 だが今は不思議と恥ずかしいとは思わなかった。 「ン……怖かったよ…」 素直に頷くと渥の動きが止まり、それから小さく溜息。 「……ちょうどいい。睦人、薬の時間だ」 「え?」 渥のすらりと長い腕が机の上に伸びる。その先を辿ると先程まで読んでいた本と、水のペットボトル――そして、見たことのない錠剤の入った濃い茶色のボトルが置かれていた。

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