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ボトルを手に取ると蓋を回し、中が透けたクリアな部分と濃い赤で作られたツートーンカラーの錠剤を二錠手の平に出す。 水を手渡されて、目の前に出したばかりの錠剤を差し出された。 「副作用の最も少ない抑制剤だ。これで副作用が出たなんていう報告は最近無い。効きは遅いが早めに飲めばきちんと抑えられる」 「………いやだ…」 「は?」 渡された水を、怪訝な顔をする渥の胸に押し返す。 「飲まない」 「…睦人」 「やだ!」 大きな声で反抗すると、急にグッと首元を掴まれた。突然の事に体がよろめき後ろに倒れ、その上から渥の体が覆い被さった。 「ワガママ言うな。ちゃんと飲め」 怖い顔をして威圧的に言う。先程までの甘い雰囲気が嘘みたいにピリピリする空気。 「…うぇ……や、やだよ……だって、………」 「だって、なに?」 涙腺が緩み出す。渥からぷいっと顔を逸らして机の上に置かれている抑制剤の入っているボトルを見つめた。 「飲んじゃったら、もう相手してくれなくなるんだろ…?また、冷たい渥に…戻っちゃうんだろ?そんなの………嫌だ…」 それならいっそこのまま、ヒートのままでいたい。ヒートの俺とならこうして話をしてくれるんだ。 ――例えそれが俺の望んでいた関係じゃ無かったとしても。 上から、聞こえよがしな溜息が聞こえた。 「……光田は利用したくなくて、俺のことはヒートで利用するのか」 「え!?違っ…違う!」 「そう思われたくないなら飲むしかないよな?」 「………」 「睦人」 頬を掴まれ、グイッと正面を向かされる。渥の表情が少し不機嫌そうに眉を潜めていた。 そんな顔をさせてしまっているのは自分か… 「……分かった…飲む」 「分かればいい」 頷いた俺の頭を渥の手がさらっと撫でた。体を起こしてカプセルを口に含むと、再度受け取った水で流し込む。ゴクン、という音がするまで渥は俺から目を逸らさなかった。 「飲んだよ」 「じゃあ効いてくるまでベッドに居ろ。そんな素ッ裸じゃ冷えると思うけど。つか恥ずかしくないの?」 渥が傍に居るからそこまで思わなかったが、言われてみればクーラーの温度設定が低すぎてブルリと鳥肌が立つ。 震えた体が寒いからだけではないことは、もう既に分かっていた。 小馬鹿にしたあと身を離そうとした渥の、昨日とは違う肌触りの良いネイビーのシャツをぎゅっと掴む。 「渥も…行こ」 じっ、と見つめる。 渥は俺の意図を汲んだのか、やれやれと夢で見たような笑い方をして再び体をこちらに倒した。 「そんなこと言ってると、我に帰ったとき恥ずかしくて死ぬよ?」 「行かないの…?」 「行かない」 「……渥」 「ここでする」 そうキッパリ言うと、思わず悲しい顔をしていた俺の首筋に、熱い唇を寄せた。

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