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「一人で悩まないで。頼って、くれるんでしょ?」 ケーイチが目元を緩めてこちらを静かに見つめてくる。こんな駄目駄目な俺にも優しい友達がいてくれる。…恵まれているんだ。なんでもかんでも悪い方向に考えるのはやめよう、そう思わせてくれる。 「ありがとう」 自然と笑顔が浮かんだ。 ーーー 『リクー!今なにしてんの?もう家?』 特にすることもなく部屋の中でぼーとしていたら、突然携帯が鳴り、有紀のテンション高めな声が聞こえてきた。 「おー。教えない」 ちなみに、有紀には俺が今寮でお試し生活をしていることは言っていない。 『え!?なんで!?教えてよ!』 「…家だよ。どうした?」 『遊び行きたいー!リクの家、俺まだ教えてもらってないよ』 「あー、また今度な」 『なんでぇ?香織さん達にも会いたいよー!』 有紀が甘えた声を出す。俺が甘えられるのに弱いと分かっててワザと言うんだから賢い、というかタチが悪い。 「………分かった、分かった。また今度教える。でも今は、病み上がりだから今度な」 『病み上がりかー。…あのさー、リクさー』 「ん?」 『昨日までのほんとに風邪だった?』 ハイテンションだった声が、ほんの少し落ち着いたトーンに変わり聞こえてきた言葉に、一瞬息が止まりそうになった。 「…なんでそんなこと聞くんだ?」 もしかして気付いてるのか…? いや、でもそれはない。 抑制剤はしっかり効いてるし念のため佳威に確認までした。大丈夫だと笑ってくれたんだ。 大丈夫。バレてない、はず。 ドキドキと嫌な早まり方をする胸に、ゴクリと唾を飲み込んだ。携帯越しに少し沈黙が流れる。 話し出したのは有紀からだった。 『…だぁって、リク昔から風邪引いたら一週間は寝込んでたじゃん。それなのに、三、四日で治るなんて、リクらしくないな~って思ったの!』 「おっ……前なあ…、俺を何歳だと思ってるんだ」 『えー?リク今何歳なの?』 「17だよ!お前の一個上なんだからちょっと考えたら分かるだろ!」 有紀の間抜けな発言に緊張していた肩の力が一気に抜けてしまった。なんだよ、ビビらせんなよ。もー 『じゃあ今度絶対家教えてね!約束だよー?』 「おう、約束な」 『リクはすぐ約束忘れるからなー。まあいいや!じゃあね』 反論する間も無く通話が切れる音が聞こえて、携帯を耳から話すと画面は既にいつものホーム画面に戻っていた。 変わらずマイペースな有紀に苦笑いを浮かべ画面の光を落とす。有紀が家になんてきたら母親が大喜びするのが目に見えている。はしゃぐ母親を思い浮かべていたら、なんの予兆もなく来客を知らせる機械音が部屋に響いた。 今日は随分と落ち着いている暇のない日のようだ。

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