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玄関に向かいながらぼんやりと、思ったよりアッサリ引いてくれた有紀の事を考えていた。 渥が言っていた有紀は病気、というのが気になってはいるが、ヒート中にあいつと二人っきりになるのは不安なんだよな。 少し先にはなるけど、ヒートが終わったらそれとなしに聞いてみようか。 「あれ、佳威じゃん!どうしたんだ?」 有紀の事に意識を向けたまま、扉を開けると目の前には制服姿のままの佳威の姿があった。別れる間際、渥のせいであまり機嫌が良くなかった佳威だが、今もまだ機嫌がいいようには見えない。性格上あまりネチネチと引きずらないタイプだと思うからきっとこれは違うことが原因だ。 突然の訪問にポカンと口を開ける俺に、佳威はさらに眉を潜めた。 「前も思ったけど、お前簡単にドア開けすぎじゃね?ヤバい奴だったらどうすんだよ」 「ヤバい奴って?」 「お前がΩだって知ってて襲ってやろうとか考えてる奴とか」 「流石に俺の顔でそれは無いかと…」 ミキちゃんや川北さんみたいに超絶可愛い子ならまだしも、胸もなければ柔らかくも無い、Ωだということを除けばどこにでも居る男子生徒にそこまで熱い想いを寄せてくる奴なんて居ないだろう。 居るとしてもかろうじて有紀くらいだ。まあ、あいつの場合寄せてる想いが、熱い想いなのかどうかも怪しいのだが。 無意識なのだろうが、佳威のぶっきらぼうな優しさを感じた。 「とりあえず入る?」 コン、 数日前に買って冷蔵庫で冷やしておいた麦茶を、コップに入れて机の上に置くと佳威は短くお礼を言った。 「ケーイチは?」 「あいつには言ってない。言ったら二人っきりになるなってうるせえから」 「そっか。…て、なんだ佳威ってば俺と二人っきりになりたかったのか!」 「………」 「………」 まさかのスルー?え、スベった?…ちょっと調子乗り過ぎただろうか。この前のこともあるしもうしばらく自重するべきだったか。 それとも本当に二人っきりじゃないとできない話でもあるのか? 「えと…?」 「とりあえず座れよ」 そわそわしながら言われた通り隣に腰掛けた。 だけど佳威の様子が少しおかしい。用事があって来たのは間違いないだろうし、話があるのだと思ったのだが何も喋らない。饒舌なタイプでは無いが寡黙なタイプでも無いので、不思議に思いながら顔を覗き込んだ。 「佳威?どーした?」

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