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顔を覗き込む俺を見て、佳威がスッと目を逸らす。 「……佳威…?」 いつもと違う態度に不安になって佳威の視線を追うと、その先にはカバンから出しておいた抑制剤の瓶。飲むのを忘れないように部屋に入って直ぐに見えるところに置いておいたやつだ。 俺から目を逸らしたのかと思ったが、どうやら佳威はその瓶に視線を向けたようだった。腕を伸ばして瓶を掴むと、一度フタを開け、少しだけ動きを止め再びフタを閉じる。 「睦人、やっぱり薬変えてるな」 瓶をカシャンとテーブルの上に置くと、佳威はゆっくりこちらに顔を向けた。 「体に合わなかったのか?」 「…うん、まあ、そんな感じ。副作用が出て」 「やっぱ飲ませねえほうが…」 「あー!それはない!そんなこと絶対にない!俺は飲ませてくれた佳威にほんと、心から感謝してる。それに副作用が出るかどうかなんて飲んでみなきゃ分かんないことだったし、どっちにしろ絶対一度は副作用が起きる運命だったんだ」 佳威が責任を感じる必要なんてこれっぽっちもない。むしろ俺の初めての発情に出くわしてしまって可哀想なくらいだ。 佳威ってばどこまでいい奴なんだ、と感動すると同時にそんなことを考えさせてしまった自分が憎く思えた。 「そういえば俺謝りはしたけど、まだちゃんとお礼言ってなかったよな。…この前は、本当にありがとう」 笑ってお礼を伝えると、佳威はなんともいえない変な顔をした。男前に向かって変な顔だなんて言うのもおかしいが、笑っているのか怒っているのかなんとも言えない表情だ。 「…なんか…あれ?…怒ってる?」 「怒ってない。つか睦人、休薬できたのか?」 「…う、ん?…………あ」 もっと上手くやれないのか、と思うが佳威の言葉に分かりやすく固まってしまった。 ヒート期間中に抑制剤の種類を変えているということは、24時間ひたすらに飲まずに我慢したか、誰かに相手をして貰ったかのどちらかしかない。 普通に考えたらすぐに分かることだった。 「や、休みだったし我慢してみたら意外とイケたんだ」 ケーイチに言われたように佳威には言わない方向で行こう。 「我慢?睦人が?」 「……おう」 それは一体どういう意味だろう。そんなに我慢できなさそうに見えるんだろうか俺は。…まあ我慢できなかったから佳威にあんなことをしちゃったわけであるから、そう思われるのは仕方ない。 「我慢、か…」 ぽつりとした呟きに目を向けると、佳威がジッと俺を見つめていた。

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