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「リクー、だいじょぶぅ?」 「………」 「怖かった~?ねえねえ怖かった~?」 「…お前は怖くなかったのかよ…」 「面白かったよ!」 「………」 「あれ?なんで俺睨まれてんの?」 手を握って貰ったからといってダメージがゼロになる訳はなく、案の定まあまあなダメージを受けた俺は昼飯にと入ったお店で精根尽きていた。もう回りの女の子達が有紀にメロメロなことなんて気にならないくらいに疲れ果てていた。 「もう~リク。怖いなら言ってよぉ。別に変えても良かったのに」 「………だってお前見たそうにしてたし」 ズルズルと食後のアイスコーヒーをストローから吸って、ボソリと呟く。昔から怖い話や特集番組が好きだった有紀。よくテレビで幽霊特集とかを好んで見ていたのを覚えていた。だからホラー映画を観たいと目をキラキラさせて言われたときも断るなんて出来なかったのだ。 俺も別に特別苦手なわけではないし、ただ予想より怖すぎたのが悪い。 「リク…」 テーブルを挟んだ向かい側で有紀が俺の名を呼ぶ。疲れ切った顔を上げると、何かを我慢するようにプルプルしていた。 「な、なに?どーした」 「っリク~!抱き着きたい~!」 「は!?駄目だよ!駄目だからな!」 「俺ん家いこ~!」 「なんでだよ」 家になんて行ったら何をされるか分かったもんじゃない。絶対に行かないと繰り返すと、むぅと頬を膨らませた。 しかしすぐにニコッと表情を明るくすると、そのままニコニコと俺を見てくる。 「……なに」 「んーん。リクだぁと思って」 「なんだそりゃ」 「だって最近、俺のこと避けてたでしょ?」 「…そんなことは」 「はい!目ぇ逸らしたぁー!風邪移さないようにしてくれたの?」 「当たり前だろ」 本当は違うけど。 「ん。だから、久々にリクと二人でいられて幸せだなあって思って。リク大好き」 んふふ、と嬉しそうに笑う有紀。その様子に、不意にフレンドキャンプで見た女の子と淫らな光景が脳裏に浮かんだ。そして、渥の発した「あいつはもう病気」という言葉。 「有紀、お前さ…」 ピリリ、ピリリ、ピリリ 「?」 言いかけた言葉に重なるように突然電子音が鳴り響いた。俺はマナーモードにしてるから違うので、有紀を見る。思った通り発信源は有紀の携帯だったようでテーブルに置いていた鳴り止まない携帯を手に取り、 「アー、渥だ」 と不思議そうに声を上げた。

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