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家までの帰り道、今週号の週間少年誌を手に入れる為寄りたかった書店に寄った。 家から近いこの書店は引っ越してから何度かお世話になっているので、どこにあるのか場所を把握している。 お目当の雑誌を手に取りレジに並ぼうとした時、不意に視界の先で見たことのある女の子を見つけた。 「……川北、さん?」 「?…あっ、こんにちは!え、と」 思わず呟いてしまった俺に、女の子は顔を上げてパタパタと近寄ってくる。 流れるようなストレートに艶のある黒髪。ぽってりとした唇は年下なのに色っぽく、服の上からでも分かるほどの両手に収まり切りそうにない豊満な胸。 この子は佳威のことが多分好きで、佳威もフェロモンが嫌いじゃないと珍しく気に入った一年生の川北さんだ。確か下の名前はメグ。グラビアアイドルに居そうな名前だと思ったからよく覚えてる。 まさかこんな所で会うとは思わなかった。 「浅香だよ。川北さん、だよな?久しぶり」 「浅香先輩!お久しぶりです!この間は雨…凄かったですね。風邪とか引かれませんでしたか?」 彼女の着ている真っ白な生地にグレージュのリボンがワンポイントになっているワンピースは、見るからに清楚で可愛らしい。 少しドギマギしながらも、先輩は俺!と会話をリードしようと思ったが、それより高等な気遣いをされてしまった。佳威が気に入るだけのことはある。 「俺は大丈夫だったよ。川北さん達は?」 「私たちは湖の方に居たので結構濡れちゃったんですけど、風邪は大丈夫でした!」 結構濡れちゃったのか。ってことは服がびしょ濡れに…そうかそうか。それって、つまり… 無意識にゴクリと唾を飲み込んでしまった。ケーイチがいたらきっと笑いながら氷点下のように冷めた目で見られていただろう。俺、キモ!やめよやめよ。 「今日は、…あの、お一人ですか?」 思春期真っ盛りな想像をしていた俺に、少しソワソワしたように、辺りを見渡す川北さん。すぐにピンときた俺は申し訳無い気持ちで謝った。 「あ~、佳威は居ないんだ。ごめんね」 「あっ!いえ!全然…そんな…!えと……」 途端にカァァと頬を染める川北さん。なんだろうこの生き物は。可愛すぎる。守ってあげたくなる見た目とは違って気の強そうだったミキちゃんとは正反対で、思わずキュンとくる。 やっぱりこの子、佳威のこと好きなんだ。佳威がいないなら俺にはさして用は無いだろう。ここは気を利かせてさっさと立ち去るに限る。 「大丈夫だよ。気にしてないから。んじゃ俺はこれで…」 「…っああああの!」 パッと服を掴まれてガクンと体が止まる。 これが噂の袖クイ!?夏だから長袖じゃ無いし、予想より力が強くてビックリしたけど。

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