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「やぁだ、有くん!いつの間にこんなイケメンに…!?おばさんビックリしちゃったわよ!んもうっ可愛い~〜〜」 「アハハ!香織さん痛い~!でも嬉しい~!」 「りっちゃんも出会ってたんならさっさと連れて来ればいいのに…!ほんと気が利かないんだから」 「だよね~!俺も早く浅香家のみんなに会いたかったよ!リクのばかっ」 「りっちゃんのバカっ」 「……へいへい。すみませんでした」 母親が有紀を抱き締め色の抜けた遊ばせた髪をぐしゃぐしゃと撫でる。される方もされる方でまるで飼い主に撫でて貰った犬のように嬉しそうだ。 微笑ましい二人を横目に俺は冷蔵庫から2リットルペットボトルのお茶を取り出しながら適当に返事をした。 今俺が居るのは我が家だ。父親はまだ帰ってきていない。既にテーブルには今夜の晩御飯が並んでいて、用意された人数は五人分。 ここまででもうだいたい分かると思うが、有紀と別れた後一旦家に帰った俺は母親に「あんた今日出掛けるんじゃなかったの?晩御飯食べる?」と聞かれ「また夜出て行くよ、有紀がバイトなんだってさ」と答えた直後。 「有紀って…有くん?」 という驚く声が聞こえ、顔を上げるとキラキラとまたもや少女のような表情の母親がこちらを見ていた。しまった、と思うが見事に手遅れで「晩御飯に連れて来なさい?」と満面の笑みを向けられる。俺には到底拒否できない圧で指示を受けた次第である。 だが、思い出して欲しい用意された夕食の数を。 「有くんお腹減った?いっぱい作ったからいっぱい食べてね」 「やったー!もう俺お腹ペコペコ!」 「渥くんもしっかり食べていってね!デザートにプリンも買ってあるから。新発売の美味しそうなやつがあったのよ~」 「ほんとですか?いつもすみません。楽しみだな」 ニコリと笑うのは、体に沿った若々しいネイビーのスーツを身に纏う人物。ジャケットは腕に持ったままネクタイを緩め、ふぅ、と息をついた男は色気たっぷりで目を奪われる。 こちらの視線に気付いたのか、有紀と同様仕事終わりの――渥と目が合ってしまった。 キッチンでコップに人数分のお茶を汲んでいた俺は慌てて視線を手元に戻す。 そして、ああ、何故よりによって渥まで、と心の中で嘆いた。 親父さんの会社で黒澤兄弟が働いてると伝えて、母親が有紀だけ呼ぶなんてあり得ないわけで…こうなったのは必然だ、必然。渥が母親の誘いを断るとも思えないし。 手元から麦茶をコップに注ぐコポコポという水音を聞こえてくる。 渥と顔を合わせるのは未だ気まずさが残るが、まさか幼馴染三人がこうして顔を合わせることが出来るとは思わなかった。 強引ではあったが、キッカケを作ってくれた母親には少しだけ感謝しておこう。 母親の渥と有紀への愛情は色褪せてない。 渥が家に来るようになって冷蔵庫に昔のようにプリンが常備されるようになったことを俺は気付いていた。そして、今後はきっと有紀の好物も追加される。俺の好物はなかなか常備されないというのに…!

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