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「いつ、お前のになった」 「昔から!約束してるんだから、リクは俺と番になるの」 「あいつが本気にしてるわけないだろ。いつの時の話をしてるんだ」 「…っ。…やめてよ、リクに手ぇ出さないで」 正論を口にされ思わず言葉に詰まった有紀が発した台詞に、今度は渥が少し口を噤む番だった。 手を出さないで、の一言。もう既に手を出した後だと知ったら有紀はどんな反応をするのだろうか、と思索する。 そもそも有紀はどこまで睦人の状況を理解しているのか。初めてのヒートが起きたこと。いつも傍にいるαである佳威が睦人のバースに気付いたこと。 そして、睦人の初めてを交わした相手が自分の兄だということを――きっとまだ何も気付いていない、と渥はただ冷静に分析をする。 「お前こそ、その病気はやく治したらどう?睦人がお前みたいな軽い男を選ぶとは思わないけどね。そんなんじゃ光田に勝てないよ」 「佳威クン…?なんで佳威クンが出てくるの?渥は」 「俺はあいつと番になる気はさらさらない」 「…どうゆうこと?」 全く予想していなかったのか渥の返答に戸惑いながら、少しだけ首を傾げる有紀。 まるで犬だ、と渥は思う。 好きだと思う人間に対して自分の気持ちを隠しもせず尻尾を振る。明るく悠々と接する犬が、主人にいつでも噛み付ける力があることを気付かせないで警戒心を解いて行く。 従順で忠実に、主人との空間に入ってこようとする者には――躊躇うことなく牙を向け、排除しようとしてくる。 大変な奴に目を付けられて、可哀想に。 まるで他人事のように渥は幼馴染の顔を思い浮かべた。いつも屈託無く笑いかけてきていた幼馴染の顔を。 「俺はΩなんて信じない。お前なら分かるだろ?紛い物の愛情で強制的に結ばれることになんの意味がある」 渥の言葉に思い当たる節があるのか僅かに息を呑む有紀だったが、すぐにかぶりを振る。 「俺はΩだからリクを好きなったんじゃない!だってリクがΩだなんて…再会するまで知らなかったよ?リクだから好きなの。リクが手に入るなら俺は何もいらない……だから」

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