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「わけわかんないこと言ってないで、話したいことは?聞いてやるから話せよ」
「もう早速ー?」
「お前が寝ちゃうって言ったんだろ」
まるで話す気がないみたいに茶々を入れてくる有紀に溜息をついて、枕の上に片肘をつき頭を支える。
少しだけ高い位置から見下ろす顔は、どこか眠そうでどこか不安そうな表情をしていた。
「?」
「…リクってば、昔もよくそうやって俺が寝るまで横で見ててくれたよね」
「……そうだっけ」
「そうだよ。ずーと、傍に居てくれた」
いつもの有紀らしい天真爛漫ではつらつな雰囲気は無く、ぽつぽつと喋る様子に瞬きをする。
「リクは、エッチ好き?」
「…………はあ…?」
何を深刻そうな顔をしてるのかと思えば。心配して損した気分になる質問が飛び出してきて堪らず呆れた声が漏れた。
「あ、童貞だっけ?」
「…もう寝るぞ」
「俺はぁ、するの大好き」
「あっ、お前!フレンドキャンプで見たぞ!ユキちゃんとかいう子との…」
前までは「付き合ってないのに何やってんだ!」と一喝してやるつもりだったが、今はもう俺の口からはなにも言えない。
「見てたのー?リクのエッチ!」
「あんなとこで堂々としてるお前らが悪いんだろ…!」
俺に見られていたことに驚いた素ぶりは見せたが、全く恥ずかしがらずにケラケラ笑うのでその額を軽く叩く。
「はー…見られちゃってたのか〜。……なんか、やめられないんだよねえ」
いつもの雰囲気に戻ってきた有紀が、痛い、と笑いながら額に触れる俺の手を握った。
そのまま自分の胸元の近くまで持ってくると抱え込むように両手で包まれる。
「俺ねえ、セックス依存症なの」
元に戻ったと思いきや、再び様子のおかしくなってきた有紀に「大丈夫か?」と尋ねようとした矢先だった。
唐突に飛び込んできた台詞。サラリと告げられたが、普段の生活ではなかなか耳にしない単語に目を見開く。
――セックス依存症?
「不安になるとね、誰かとエッチしないと気持ちが収まんない。イライラしちゃうし泣いちゃうし何も手に付かなくなって…俺が俺じゃなくなるみたいに、なる」
抱き込まれた腕に一層力が篭る。本当に眠かったのか体温が高く、熱いと感じる程だ。
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