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「だから…佳威にはΩだってバレた…。でも俺は誰にも噛まれてないし番もできてない」 本当は佳威の事もあまり言いたくなかったんだが、嘘が向いてないと言われた手前絶対に隠しておきたい事実以外は暴露してしまうことにした。下手に隠して渥とのことまで引き摺り出されては本末転倒だ。 佳威を中学から知っている有紀なら、佳威の性格を考えれば納得がいくだろう。 「佳威クンに…」 「安心したか?」 …安心したか?なんて傲慢な台詞、正直恥ずかしい。 しかしどこまでの想いがあるのか分からないが、好き好きと懐いてくる相手にはこれ以外の言葉が思い付かなかった。 ユキちゃんとの蜜事を見てしまい軽い想いだと思っていたのに、セックス依存症だったということならまた話は変わってくる。 ――渥の言ってた病気って、そういうことか。 「………うん、安心した」 脳内で渥の言葉に一人納得していると、落ち着いた声に抱き込まれていた腕の力が抜ける。 よし今だ!と思ったのに、俺はどうしてか有紀に抱き締められたまま動けずにいた。 色の抜けたさらさらな髪がシャツ越しの肩口に触れる。少しの重みを感じて、額を押し付けられていることに気付いた。 「…リク凄い。俺したくなったらしないと落ち着かないのに、落ち着いちゃった。……やっぱ俺にはリクじゃないと駄目だ」 「…?」 いつでも抜け出せる腕の拘束力。胸にあった腕がゆっくり下に降りて来て俺の下腹部に触れる。凹んだ腹を撫でるように触れる指が、手の平の熱が、薄いTシャツ越しに伝わってきた。 擽ったい。 「なにやってんだよ、お前」 「ここにあるんだなーて思って」 「?」 優しく、それはもう優しく触れる手の感覚。危害というには大袈裟だが、危害を加える気配が全く無いのが分かる。 先程までの空気が嘘のように落ち着いていた。ただ俺の腹を撫でる謎の行動だけ浮き上がって見える。 「……有紀の、それ。依存症って…治せないのか?」 変な空気感に耐えられず、違う話題を持ち出せば撫でていた手が止まった。 「簡単な話じゃないと思うけど、さ」 「治せるよ。精神的な問題だし、俺αだから余計簡単だってお医者さんが言ってた」 αだから、ってαが関係する治療法なのか?全くピンと来ない。 「どうやって治すんだ?」 「それはねー、番を見つけることですー」 「………番?」

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