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長身の強面金髪不良が2人並ぶと威圧感がハンパない。堪らず数歩後ずさると春さんに手を掴まれた。
「安成、大丈夫だから」
「あ…うん」
優しく声を掛けられ、目の笑っていない早妃くんと春さんを交互に見比べ、そして俺は素直に頷き足を止める。
「そうそう、大丈夫だって。俺はね、今日仲花クンに謝りに来ただけだし?」
「あやっ、謝りに…!?」
早妃くんからの思い掛けない言葉にギョッとして目を見開く。春さんの横に並んだ早妃くんは口元にだけ笑みを浮かべたまま俺を見下ろすと、突然勢い良く体を45度に曲げた。
「余計なこと言って、すんませんしたぁ」
一挙一動にビクビクと怯える俺を他所に、早妃くんは頭を下げたまま体を倒した勢いとは正反対にゆっくりとその一言を発した。
すんませんしたぁって…
すみませんでした…?
「すっ、すすすすみませんでしたあ!?!?」
「ぷっ」
早妃くんの言葉を反芻する形で驚く俺に、後ろの方で叶の吹き出す声が聞こえてきたがそんな事に反応している余裕はない。だって、あの早妃くんが俺に頭を下げて尚且つ謝罪の言葉を述べたんだぞ!?
え!?え!?と困惑していると頭を下げたままの早妃くんから「許してくれるまで、頭上げませんのでぇ」と唸るように聞こえてきて、それが暗に『お前が許さないと頭が上げられねえんだから、さっさと許せよボケが』と言われているような気がした。
許すってつまりアレだよな?この間のことだよな?多分春さんがなんか言ってくれたんだよね?…だったらもう俺から何かを言うことはないし言う勇気もないしとにかくこの訳のわからない状況から1分1秒でも早く逃れたいんです!俺は!というわけで!
「ゆ、許します!許します!許しますから顔あげてください!お願いします!!」
早妃くんからは見えないとは分かりつつ身振り手振りで頭を上げてもらうように騒ぐと、ようやく早妃くんがゆっくりと頭を上げた。
そのまま春さんを見やり、目を細める。
「仲花クンのお許しが出たんだから、お前も機嫌直してくれんだろ?」
「本当にもういいの?」
春さんは早妃くんの質問には答えず俺を見下ろす。それにブンブンと高速頷きで肯定の意味を返すと、早妃くんの方へ顔を向けて「次はねぇからな」と凄む声が聞こえた。俺に言ってるわけじゃ無いのにブルリと体が震えてしまう。
ビビる俺に気付いてか気付かずか春さんがこちらを向いて、ほんの少し申し訳なさそうな顔をした。
「サキがごめん。…じゃあそれだけだから。またね、放課後」
「あ、うん…!またね!」
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