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「あれ?…春さん?どうしたの、って…ン!?」 安定の脳内語りをしていたら、去った筈の春さんが颯爽と戻ってきた。 どうしたのかと握り締められたままだった叶の手を離し出迎えると、速度を落とすことなく近寄ってきていつかのあの日みたいにあっという間にキスされた。 すぐに唇は離れたが、ポカンと呆気にとられる俺を見下ろしながら春さんが愛おしそうに笑う。 「今日まだしてなかったから。…好きだよ」 甘い言葉と共に先程まで叶に握られていた手を取られた。そしてこちらを見ていた視線が何故かスイッと俺の隣にいた叶に向く。 照れる暇も無く春さんの体越しに同じように戻ってきた早妃くんが扉の近くに立っているのを見つけて、その形相が恐ろしく険しいのに気付いしまった。 ……あっ…え……!? 明らかにこちらを睨んでいる。 貼り付けていたあの胡散臭い笑顔が剥がれ、人間味のある表情に安心するどころか最大級の恐怖を覚える。 あわあわと春さんに視線を戻せば俺に向けていた笑顔ではなく真顔で叶を見下ろしているし、叶は叶で隠すことなく嫌そうな表情を浮かべている。 …な、なに、この状況… 「春、さん…あの」 「安成~、俺やっぱ応援できないかも~」 「え!?叶、何言ってんだよいきなり」 「おい、春。もういいだろ!さっさと戻ろうぜ」 あ、ああ〜…早妃くん顔怖い。 顔怖いって!! いやいや待ってよ…なんだこれ!? さっきまでの流れならこのまま平和で楽しい日々が始まりますハッピーエンド!おめでと〜パチパチ〜で終わるところだろ!? なんでこんなパチパチどころかバチバチしてんだよ!…全然上手くないよ!! 「は、春さん、なんか変な空気に…」 「俺、やっぱ駄目かも」 「え?」 「やっぱ好きな子は独り占めしてたい」 ――はい? 「俺は俺のままで、いいんでしょ?」 「………」 今、変なフラグが立った気がするのは俺だけだろうか。 春さんの見たことのない笑顔にトキメキなのかザワつきなのか判断が付かない動悸を覚える。楽しむしかないと言った矢先、早くも楽しめる自信を喪失し掛けている俺は恋人から目が離せなくなってしまった。 色々とヤバーイ空気が漂うなか、どうしようもなく現実逃避したくなって、わりとなんでも話せるようになった甘党ボーイが脳裏を掠めた。 こんな時だからこそ話を聞いて欲しい。 ――桃哉くん… この状況は一体なんなんだろう… 俺、なんか間違った!!?

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