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「だめなの?なんで?」
「だ、だって」
「安成にさわりたい」
「ひいい…だだだって!俺たち付き合ってまだっ…い、1日しか経ってません…!!」
「?」
なんで「?」なのおおおおお分かるでしょ!まだ1日しか経ってないのに、そんなとこまでするなんて時期尚早…!
「いくらなんでも早過ぎるかと…っ」
「……エッチはまだ早いってこと?」
そうそう、それ!てかやっぱりしようと思ってたんですね…!?うわーん!お母さん怖いよこの人ぉ…手が早すぎて童貞極めてる俺にはついていけないよぉ…
「そっ、そうです!…エッ……チっはまだ早いです!」
「付き合ってるのに?俺、ヤリ捨てなんてしないよ?」
「あわわ……その、付き合ってても…それはそれ、これはこれでっ…」
「…………ふーん」
俺のあまりにも必死な態度に納得してくれたのか狩吉さんの手が服からスルスルと出て行ってくれた。
「いつまで待てばいい?」
「えっ…」
「3日?」
3日って本気で言ってる!?この人!?
「さ、3ヶ月で!」
「無理」
一刀両断されてしまった。3ヶ月でも早い方だと思ったのに妥協点にもならないらしい。
「じゃあっ…2ヶ月ください!」
「そんなに待たされたら俺、優しくできないかも…」
イコール酷くするってこと?
「ううう……じゃあせめて、せめて1か月は俺に時間を…!…心の準備が、本当に…必要なんです…俺には」
なにせ未経験なことには必要以上にビビってしまう童貞ですから。
懇願するように頼み込むと、狩吉さんはようやく頷いてくれた。
「わかった。じゃあ1ヶ月後ね。浮気したら容赦なくヤルから」
「もっ…もも、勿論です!浮気なんてする訳ないでふッ」
ヤルってどっちの意味のヤルだろう、と一瞬考えてしまったがどっちだろうと恐ろしいことには変わりない。
ビビって語尾を噛むという失態を侵す俺を見て、狩吉さんが両手でぎゅうと抱き締めてきた。
「嘘だよ、安成。怖がらないで。…好き」
あの狩吉さんから聞こえてきたとは思えない程優しく囁かれる声が何だか心地いい。
――怖いはずなのに、優しい。
そのギャップに未だ戸惑いは隠せないが、俺の要望を飲んでくれた狩吉さんに、もしかしたら怖いだけの人ではないのかも知れない、と少しの希望が見えた気がした。
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