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すぐに俺の横に並び、顔を覗き込んでくる。眉をひそめることなく掘りの深い大きな目をこちらに向けてくるのだが、怖くない普通の顔をされるとかなりの男前でそわそわしてしまう。 「あ…と、ごめん…。俺今日から放課後、図書室で勉強しようと思ってて…今週は一緒に帰れないんだ…」 「勉強?なんで?」 「なんでって…来週からテストだよ…?」 「そうなの?」 い、居たーーー!! ここにも俺と同じ出遅れた人が!!! 同類の存在に喜んでみたが、狩吉さんが真面目に勉強なんてする筈がないよなあ。テストとかどうでも良さそうだし、と我に返る。 「…というわけで、俺は勉強しないとやばいんだ…」 「ふーん。そっか。じゃあ行こ」 「………行こ?」 「?図書室、行くんじゃないの?」 既に歩き出していた狩吉さんが不思議そうに振り返る。 狩吉さんも一緒に行くの…?基本的に大人しい者たちが集う図書室に?あの喧嘩と女の噂が絶えなくて、血の気の多いと聞く狩吉春が!? 明日、雪が降るのではなかろうか。 「……あの…でも」 「?」 「そっちに、図書室は…ない、かな」 「マジ?図書室行ったことないから分かんない」 それでこそ狩吉さんだと、なんだかホッとした。 ーーー 俺の学校の図書室は結構広い方だと思う。 1階にある図書室にはたくさんの机とそれを仕切るように本棚が並び、本棚によって区切られた空間が何個もあるような作りになっている。そこで生徒達は思い思いの場所で本を読んだり勉強をしたり、あるいは机に伏せって睡眠を貪っていたりと好きに過ごしているのが、普段の図書室の姿だった。 しかし、今日は違う。 何故なら、突如現れた狩吉さんの存在に気付いた多くの生徒が恐れをなし、そーと目立たぬよう慎重に席を立ち足早に部屋を出て行ってしまったからだ。 狩られるとでも思ったのだろう。…みんな、その気持ちよく分かる。ごめんな同志達よ…でもこの人、噂より断然大人しいから大丈夫だよ…多分… 謎のフォローを脳内で繰り広げながら、俺はなるべく人目につかなそうな机へと向かう。奥の方の空いてる空間を見つけ、ここなら狩吉さんの姿に驚く生徒も少ないはずだと鞄を置く。 そんな俺の考え抜いた席決めに、狩吉さんはさも当たり前かのように隣に腰掛けた。 「図書室って広いね。寝ていい?」 早速寝るの? 勉強する気ゼロじゃないですか、この人。 「…うん。…っえと、おやすみ」 「おやすみ」 柔らかく微笑んで狩吉さんは俺の唇にキスをしてきた。軽いキスではあったが、離れ際にぺろりと唇を舐められる。 「!!?」 ばっと辺りを見渡すが誰の姿も目には入らなかった。 「か、狩吉さん~…」 「つい」 笑いながら狩吉さんは机に伏せる。ついってなんですか、ついって。…寝る体制が板についてるんだよな。 顔が赤くなる俺は火照りを誤魔化すように、ぱたぱたと勉強道具を机に広げた。

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