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06
「!!」
見惚れるように春さんの顔を見つめていたら、突然、髪に触れていた手を掴まれた。
ビクーッと大袈裟な程にビビってしまい、心臓が口から飛び出しそうになった。
「…あ、ごめ…起こした?」
俺の腕を掴んだまま、狩吉さんが閉じていた瞼をゆっくりと開ける。下から見上げてくる瞳は爛々と輝いていて、このまま捕食されるのでは?という感覚に陥ってしまう。これで本当に寝起き…?
「…いま、俺のこと名前で呼んだ?」
「…う……、あの……………はい」
聞こえてたのか。
いつから起きてたんだろう。
は、恥ずかしっ…
「安成、もいっかい呼んで」
「それは…ちょっと……」
「おねがい」
「……………」
そんな甘えるようにおねだりしないでくれ。狩吉さんが甘えてくるなんてそれこそ思ってもみなかったことだ。
「…………は…………は、る…さん」
狩吉さんの目元がほんの少し緩む。
「…もっと呼んで」
「……はるさん」
「なーに?安成」
「あっ、狩吉さんが呼べって…」
「駄目。これからは春って呼んで。もう一回」
「…は、春さんが呼べって言ったから、呼んだだけ…デス」
「そうだっけ。…そうだったかも」
狩吉さん、もとい春さんが嬉しそうに笑って掴んでいた俺の腕に頬を擦り寄せた。
その仕草に思わずキュン…と胸が締め付けられる。
………………キュン?
「安成ー、チューしたい。ふかーいやつ」
「チュ……ここで?」
「ここで」
さっきもしたので今更な気はするが、一応キョロキョロと辺りを見渡す。1時間前と変わらず視界に入る範囲に生徒の姿は見えなかった。
「……いい、よ」
「やった」
春さんは体を起こすと俺を横から抱き締めてきて、そのまま片方の足を俺の体を挟むように椅子の上に投げ出した。
あ!あ!靴ー!とは思うのだが注意できないまま、春さんは俺の顔を覗き込み鼻筋を触れさせる。
唇がいつ触れるのかドキドキするような距離で、春さんの双眸が俺を捉えた。
恥ずかしさにギュッと目を瞑った俺の瞼にキスを落とすと、次は鼻、上唇と降りてきて、ぺろりと唇を舐められながら唇が重なる。
「…ん」
体の関係は1ヶ月の猶予を貰ってはいたが、キスだけは別ということにされてほぼ毎日のように春さんとはキスしていた。別れ際にソフトな触れるだけのキスをする時もあったし、今みたいに深いディープなキスになるときもあって、初めての時よりだいぶ俺の経験値はアップしたと思う。
それでも何度やったって慣れなくて、今だって心臓がうるさいくらいドキドキしていた。
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