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抱き締められたまま交わす口付けは、心から愛されているような錯覚に陥いって気持ちが高ぶっていく。 家族以外からこんなにも求められて愛されているなどと感じる日が来るとは思わなかった。 しかもそれを与えてくれているのが、今まで俺が最も恐れていた「狩吉春」という男だなんて。 ――人生何が起こるか分かったもんじゃない。 「……っ、は、はる、さん」 「ン…はい。なに?」 「も…おわり…!」 「えー、短い。もうちょっと」 春さんは顔を離した俺が気にくわないのか抱き締める腕を緩めることなくチュ、と頬に唇を寄せてくる。 擽ったいような感覚に身をよじりながら精一杯のストップをかけた。 「一応、こっ、ここ学校だから」 「誰もいないよ?」 「…~~~っ」 それはそうだが。そうなんだけど!学校でこんなことしてるなんて何だか恥ずかし過ぎて堪らない。背徳感てやつ? でもこれ以上駄々を捏ねると機嫌を損ねそうで、言葉を噤む俺の顔を至近距離から見つめながら春さんが小さく呟いた。 「俺とチューすんの、いや?」 「え?」 「…気持ちよくない?」 顎を引いて春さんに視線を合わせると春さんも少しだけ顔を引く。 俺の答えを待つようにジーと見つめてくる瞳に、なんだか昔飼っていた大型犬のタンポポを思い出した。 白くてもこもこの毛並みがまるでタンポポの綿毛みたいで本当に可愛かくて、大好きでたまらなかった。中学に上がる前に死んじゃったけど、あいつもよく俺の事をこうやって見つめて来てたっけ…。俺がこの世で唯一平気な犬はタンポポだけだ。 「………春さんとの、嫌じゃ、ないよ」 「…ほんと?」 「うん。むしろ好き…かも…」 「チューが?」 「?…うん」 「そっちかー」 「?」 「俺はチューも安成も、大好き」 そしてタンポポの瞳とダブる春さんに、またもや不意打ちでキスされた。

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