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03
妹にテスト勉強の邪魔をされることを心に決めたその日の放課後。
いつの間に登校してきたのか春さんが教室にひょっこり顔を覗かせてきた。
実は最初の待ち合わせに遅れて行った日から、春さんが学校に来ている時はたまにこうして放課後迎えに来てくれるようになっていた。
クラスメイトは春さんの登場に当初程の反応はしなくなったが、それでも教室内が嫌に静かになる。お目当てがもやしだということは分かっていても、下手に騒いで春さんに目を付けられたくないという想いがひしひしと伝わってくる。
「安成、かえろー」
春さんは俺を見つけると近寄って来て、優しげな低音で俺を呼ぶ。
来させるのは申し訳ないのでなるべく早く教室を出ようと思っているのに、いつも先に春さんが来ちゃうんだよな、と叶に悩みを溢したら「惚気 んな」とマジトーンで返されたが、これのどこが惚気だと言うのだ。
ガタガタと椅子から立ち上がり慌てて俺も鞄を持って春さんの傍に寄ると、なんだか嬉しそうに笑われた。
「だいじょーぶ?」
「う、うん。ごめん」
「今日も勉強するの?」
「!…うん、勉強するけど、今日は家でしようと思って…」
「家?イモートちゃんは?」
「妹は、いるけど…たまにはいいかな、と」
「俺ん家つかう?」
…マジで?
まさか春さんの方からそんな提案をしてくるとは思わなかった。
だが、しかし!今日の俺は心を決めているのだ!決して折れない強き心!
「…い、いや〜!流石に勉強する為だけに、春さんのお家行くのは…気が引け、ます」
「でも、安成家帰っちゃったらそれで今日終わりでしょ?それは俺がイヤ」
「うぅ…でも……」
ヤンキーパパ&ブラザーが…
「俺、勉強の邪魔しないから。大人しくしてる。ね?」
「……………じゃあ、…お邪魔させて頂きます」
ちょろ過ぎるな、俺。
ノーと言える強い意志と、決して折れない強き心が欲しい。
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