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というのも、ヤンキーブラザーが帰ってくる少し前から催していて、この問題が解けたらトイレを借りようと決めていたのだ。ちなみにトイレの場所は前回一度借りたのでバッチリである。狩吉ママが綺麗好きなのか、居心地が悪いほど綺麗なトイレだった。 チラリ、とベッドを見る。 春さんは寝相よく最初に寝転んだ位置から1ミリたりとも動くことなく穏やかに寝ている。留年することなく3年まで上がってきてるのは、テストで落第点を取っていないからなんだと思うけど、彼はいつ勉強するつもりなんだろう。授業もろくに出てるとは思えないし、前日の夜に全てをかける派か? 「………」 眉間に皺を寄せていない無防備な寝顔が可愛……あああ!うん!俺疲れてるな!今は夜も勉強してるし睡眠不足かも知れない。そうに違いない。 というか、そんなことより、今はトイレだ。 耳を澄ませてヤンキーブラザーの動向を探るが、玄関から入ってきて冷蔵庫を開ける音がして、すぐに俺たちの居る隣の部屋に引っ込んだようだった。 春さんの言う通りだな。 俺なんか部屋に居ても妹が無断で侵入してきて俺のベッドで俺の漫画を読み漁り出すから、帰ってきてもリビングでゴロゴロしてるってのに。なんてプライバシーのしっかりしたお家だろう。羨ましい。 ヤンキーブラザーは自室に引っ込んだまま物音一つ立てなくなったので俺はそろり、と腰を浮かせて扉に向かう。 念の為、扉に耳を押し当てて向こうの様子を伺ってみたが問題無さそうなので春さんを起こさないようにそーと部屋から出た。 ヤンキーブラザーの部屋であろう扉を横切りトイレに向かう。ささっと用を済ませて洗面台で手を洗っていると背後でガチャという音。 「!?」 思わずトイレに駆け戻りそうになる程驚いた俺は、恐る恐る目の前の鏡越しに後ろを見やるとヤンキーブラザーの部屋からブラザーらしき少年が出てきて、こちらを見ているではないか。 「あっ、あの…お、お邪魔してます…」 慌てて振り返り深々とお辞儀して顔を上げる。目の前の彼はそんな俺の顔を見ながら、静かに後ろ手に扉を閉めた。

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