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ヤンキーブラザーだと勝手に呼んでいたが、初めて見る春さんの弟はどこからどう見てもヤンキーではなかった。
髪は俺と同じ黒髪だけど、俺の色んな意味での無造作ヘアとは違いラフにセットされた髪型はワザと適当にしてます、みたいなオシャレなやつだ。
制服からまだ着替えて無かったのかどこかで見たことのある制服は、ネクタイこそ外しているものの春さんとは違いきちんと着ていたことが伺える。
そして何より、驚いたのはその顔だ。
――春さんにソックリ…!
まさにもう1人の春さんと言った風貌であるが、どちらかというと春さんが怖い顔をせず普通にしてる時のTHEイケメン時の顔と瓜二つ。双子だと言われても疑わないレベルだ。
違うといえば髪型と髪色、体型位だろうか。普段から喧嘩ばっかしてるらしい春さんと比べると些か華奢だ。もやしの俺が言うのもなんですけどね。
「兄貴の友達、ですか?」
驚きのあまりジーと見つめていた俺に、彼はゆっくりとこちらに向かって来ながらそう聞いて来た。
ふと目に付いた彼の履いているスリッパに、某萌えアニメの主人公が描かれいることに気付いた。ピンク色の髪をしたキュートな女の子が星の散らばった瞳を俺に向けている。
――もしやこの人俺と同じ趣味…?
スリッパに安心感を覚えた俺は、近付く弟くんに向かってぎこちない笑顔を向けた。
「友達、かな。うん。友達。あ!トイレ借りました。ありがとう…ございました」
「いえ。…珍しいですね、兄貴が友達連れて来るなんて。それにこんな時間から家に居るのも久しぶりです。普段数日家を空けることもザラなんで」
「そ、そうなんだ…」
………うまい返しが出来ない。
春さんと正反対のようによく喋る弟くんだ。
俺軽くコミュ障だからな。初対面の人間と会話なんか盛り上がった試しがない。
叶は最初からあの調子だったからなんとかなって仲良くなれたが、普段からああはいかない。
弟くんは萌えスリッパを床の上で滑らせながら俺の近くまで来て足を止めた。
華奢とはいえ、やはり俺よりデカい。春さんよりは小さく感じるが、それでも多分175以上はあるんじゃないだろうか。
というかさ、
ち、近くない…?
距離感まで似なくても、と少しキョドってしまう。俺を見下ろす彼に今度は逆にジーと品定めするように見つめられた。
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