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属性を忘れてはいけません

3週間。 俺が春さんと付き合い始めて3週間が経った。 本日ようやく最終科目のテストが終り、明日は土日で休み。いつものように春さんと帰宅しながら、テスト明けだしどこかにご飯でも食べに行こうという話になって適当に街中をブラついていた。 叶が例の彼女とデートだと言っていたからもしかしてどこかで会うかな、なんて期待してたけど全然会わない。写真も勿体ぶって見せてくれないし、1度でいいから叶の彼女さん実際に見てみたいんだよなー。 そんなことを考えていたら、隣を歩いていた春さんがこちらを向いた。 「安成なんか食いたいもんある?」 「えーと…俺はとりあえず甘いものが食べたいかな」 「甘いもん?デザート?」 「そう!デザート。勉強し過ぎて脳に栄養足りてない気がする…」 「頑張ってたもんね」 「春さんこそ勉強付き合ってくれてありがとう」 「んーん、ぜんぜん」 春さんが笑う俺の頭を撫でる。こんなとき彼の目元は蕩けるように柔らかく緩み、ゆっくり口角が上がるんだ。 恐ろしい猛獣だったはずなのに最近ではまるで牙を抜かれた獣…いや、それよりも穏やかな大型犬みたい。俺が偉そうに言うのも何だがいい傾向だ。 俺はというと、なんとこの3週間で春さん相手に基本会話でならドモらず喋れるようになっていた! やっぱ3週間もあると人は環境に慣れるんだな。 もちろんドモらずに喋れるようになったなんて慣れたと言うには程遠いが、これでも成長した方だろう。俺にとっては大進歩だ。どうかどうか褒めて欲しい。凄いぞ!安成!偉いぞ!安成! あのヤンキーブラザー、ではなくイケメンブラザー桃哉くんに遭遇したあの日以降も、春さんとは放課後ずっとお家デートという名の勉強会だった。もちろん勉強してたのは俺だけだけど。 ちなみに桃哉くんにはあれから一度も会ってない。多分あの時は玄関に見知らぬ靴があったからわざわざ出てきたのかな、なんて思うほど桃哉くんの姿を見ることは無かった。 テストが終わり、結論から言えば春さんの部屋での勉強は、慣れると驚くほど捗り集中できてとても助かった。 ただ本当に勉強しかしてないのかと言うとそうでもない。

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