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勉強がひと通り終わり、そろそろ帰ろうかな…と伝えると我慢していたのか途端に春さんが甘えだして恋人らしい時間に突入し、スキンシップが増える。
そして、俺は何となくその時間を意識していてだんだんと早めに帰宅を伝えるようになっていた。最初は無意識だったが途中から事の重大さに気付き、そろそろヤバいと狼狽えた。
俺は、確実に春さんに惹かれ始めてる。
気付かないようにしてたけど、春さんに触れられることが嬉しいと感じるようになってからは、気持ちを無視することはできなくなってしまった。
好きなのだろうか…
まだそこまでの気持ちに断定は出来ないが、もうだいぶ春さんに傾いてる気がする。
「あ」
俺の頭を撫でていた春さんが、はたと手を止め携帯を取り出し何か操作をし始めた。
なんだろうと、キョトンとしながら待っていると「やっぱり」と少し面倒臭そうに呟いた。
「春さん?」
「………安成ー」
「ん?」
「実は俺、お前に言ってなかったことがある」
突然だった。
「え、なに?」
「秘密にしてたわけじゃないけど…言うの忘れてた」
「なにそれ」
心なしかションボリしている春さんの言葉に思わず笑みが溢れてしまう。
何を言ってなかったのかは知らないが、忘れるくらいなら大したことではないだろう。
気楽な気持ちで春さんの次の言葉に耳を傾けると、言葉を探すように、ん~と違う方向を見て再び俺に視線を落とした。
「sakuraっていうチーム知ってる?」
「…うん…知ってるよ」
というか、知らないわけがない。
さくら、なんて俺の好きな花の名前を使っておきながら、ここらでは最強だとか謳われてる超凶暴でお強い不良たちが集う団体のことだ。
不良とはなんの縁もゆかりもない俺が知ってるくらいの色んな意味で有名なチームであり、俺の関わりたくない団体部門第1位に輝いてる。
もちろん興味を持つこと自体が怖いので、あまり顔は覚えて無いが幹部とかいうチームの中でも強いらしい数名は、当たり前だが俺と同じ学校に在籍していて確か春さんも入っていたはずだ…
「俺、そこに入ってて」
うん、やっぱり入ってるそうです。
チームとかほんと似合うよね、この人。
でも、春さんがどこのチームに所属していようが俺にはあまり関係がない。何故なら俺が春さん以外の不良たちと戯れることなど万に一つもありえないのだから。
「先月から頭 張ることになった」
そう、例え春さんがトップになったとしても俺に火の粉が降りかか、ら、…なければ…………なんでも……………
はい?
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