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俺の妹は2個下の今年高校に上がったばかりのピチピチの1年生だ。
妹はとにかくうるさい。
家に俺がいると分かった途端、何かにつけて文句を付けて絡んできて、お前はチンピラかよ!と思うことが多々ある。さすがに自分の妹に対してまでビビるなんて事はないが、限りなく面倒臭い。
昨夜もそうだった。俺が先にテレビ見てたのに、途中からリモコンよこせ、よこせとそれはもううるさくてウンザリしてたら、母さんが口を挟んできたんだ。
「もう、安くん!理子 ちゃんにテレビ見せてあげなさいよ。うるさいんだから」
「えー、ママひどーい!お兄ちゃんのコレどうせ録画だよ?また深夜に1人で見るんだから今見なくたっていいじゃんー!」
「リアタイ派がタイムラインでどんどん屍になってるんだ!下手に遡ってネタバレするのもやだし、俺も早く皆と盛り上がりたいしCM飛ばしてんだからすぐ終わるって!」
「…ママー。オタクの言ってること全然わかんなぁい」
「おおい!!?お兄ちゃんのことオタクって呼ぶなよ!?お前の可愛いところは俺のことをお兄ちゃんって呼んでくれるところだけなんだからそれ無くなったらお前全然可愛くないからな!」
「はあ!?サイッテー!オタクしね!」
「理子!口汚いわよ!安くんも妹にもっと優しくしてあげなさい。お兄ちゃんでしょ!」
…てかさ。
お兄ちゃんでしょ、て
もはや呪いの台詞だと思うんだ、お兄ちゃんは。
それにお兄ちゃんだって、逆に優しくされたい時がある。
昨夜の記憶が走馬灯のように駆け抜けていったが、簡潔に述べよう。
お兄ちゃんは、お家に帰りたい。
「へ~!あんたが春さんのかあ!めっちゃ細いっすね!」
「折れそうだな」
「ギャハハ!さすがに折れねえべ!てか、どこで春と出会ったんだ?何年?今年入ったばっかか?」
「……あ、あの…さ、3年です…すんません…」
「ウッソ同い年かよ!ウッソ!!」
「嘘じゃねえだろ。俺、見たことあるよ。何組かは知らんけど」
「つーか春さんが同い年って言ってたじゃないっすかー!だからオレ敬語使ってんのにぃ」
「そーそー、仲花クン?だろ。俺もちゃんと聞いてたし~。おめーがアホ過ぎんだって」
「あぁ!?誰がアホっつった!?表出ろやゴラ!!」
「は?上等だよ。んのかわり泣き面見せんじゃねえぞ!?」
ひいいいいいいいいいいもうイヤあああああああああ!!!
バカ!俺のバカ!自分の属性軽く見てんじゃねえよー!お前はビビリだろ!チキンだろ!何考えてんだ、数時間前の、俺!
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