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目の前で喧しく騒ぎ立てているのは、数にして4人。幹部というだけあって集まっていた人数は思ったより少なかったが、それでも不良が4人。皆さんいかにもヤンチャしてますって感じだし、煙草と香水の混じった匂いするし、やだもう超、怖い。
そして、なにより恐ろしいのが、春さんが今!ここに!居ないことだ!!
お店に入って早々誰かから電話がかかってきて、この恐ろしい人達に「安成、頼む」と言って店の外に出て行ってしまったのだ。
春さん…頼む相手間違ってるよ…!
信頼してるのかもしれないけど既に俺のチキンハートが崩れ掛けてるよぉぉ…
さらに言えばこの店自体も未知の領域だ。
ファミレスとかそんなとこかと思ってたのに全然違った。全体的に暗い。酒の匂いもする。かなりアングラな空間であることに間違いはない。
さすがに目の前に酒などの飲み物は置かれていないが、多分普通なら未成年立ち入り禁止区域な気がする。
どうやら春さんとここの店主が知り合いらしいが、店主も怖いんだよぉ!なんで眼帯してんの!?それ何隠し!?メバチコ!?メバチコだよね!?
「おい、おめーらやめろ。春にドヤされんぞ。今日はあんま騒ぐなって言われてんだろ」
心の中でパニックを起こしかけていた俺の横から、今まで黙っていた不良…様が、目の前で胸倉を掴み出す2人に冷静に言い放った。
春さんと同じくらい明るい髪色をしていて、怖いオーラも半端ない。隣にいるとは言え、ガン見など出来ないのでチラリと目線をやっただけだが、なんかこの人見たことあるな…
不良様の放った鶴の一声に、目の前の2人は渋々といった様子でお互いの胸倉から手を離す。そのうちの1人が不満そうに椅子にどかっと座りながら俺の横の不良様に顔を向けた。
「サキぃ、春の名前出すのはずり~よぉ」
「おめーら静かにさせんのはそれが一番手っ取り早えんだよ」
ふん、と面倒くさそうに鼻を鳴らした不良様はサキと言うらしい。春さんみたいに下の名前なんだろうか。この見た目でサキとは…
「あ、サキって名前じゃねーよ?早妃 って苗字覚えてねえ?」
俺の心の声が顔に出ていたのか不良様が俺の方を向き、そんなことを言ってきたので図らずとも全身が震えた。
こ、これ話し掛けられてるんですよね?俺に顔向けてますもんね…?
なんだっけ。なに聞かれたんだっけ。
あ、ああ、早妃って苗字覚えてないか、か。
早妃…早妃…さき………
うん。聞いたことあるね。
なんなら1年生の時同じクラスでかなり怖い思いをしたよね。
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